世界一お前が好き
そわそわ
そわそわ
「何そわそわしてるアルか。ウ〇コアルか?」
「ちげェェェよ!黙れやクソガキ!」
「違うよ神楽ちゃん。きっと今日はハナちゃんが来るんだよ」
「ちょ、マジで黙ってくんない?」
いや、まあ、そうです。当たらずしも遠からず、と言うか大当たり。ど真ん中のドストライク。
今日は俺の彼女、ハナが万事屋に来る日だ。
俺とは少し歳の離れた小さくて可愛い可愛い俺の彼女。もう小動物的な、本当愛くるしい奴。
そんな彼女が来るってんだ、そわそわしない男なんてこの世にいたら是非紹介してくれ。そいつのことは神として称えるから。
この前なんて「離れないで」って泣きながら言われた。正直やばい。いろいろと。
あいつは自分がガキだって、気にしてるらしい。だから俺が大人の女の所に行ってしまうんじゃないかと不安なんだとさ。
馬鹿じゃん。そんなところも可愛いけど。
俺があいつから離れるなんて無理。絶対無理。
確かに16歳と20代にしがみついているような奴だ。そう思うのは当然だ。
…俺だって、そうだ。
こんなオッサンと可愛い10代の彼女。いつか年相応の男のところに行っちまうんじゃねーかって思ったことも無いわけじゃねえ。
実際そんなことがあったら銀さん何するかしんないよ?その男殺しちゃうかもしんないよ?
そう思うくらい、あいつは俺の中で大きな存在。
言わばあいつは肉眼で見える俺の幸せそのものなんだ。
ピンポーン
そのインターホンは幸せを知らせる鐘。
俺は目にも止まらぬ速さで玄関に向かった。
そしてガラリと勢いよく戸を引き、立っている奴の顔を確認。
そこには、待ち望んでいた笑顔があった。
「こんにちは、銀さん」
そんな愛くるしいハナを、取り敢えず抱き締めとく。
途端に香るシャンプーの匂いに一瞬目眩のようなものを感じた。
「ぎ、銀さん〜」
下に視線を向ければ耳まで真っ赤にしたハナが俺の腕から逃れようと身を捩っている。
あー、だからさあ…なんでそんなに可愛いわけ?
「ハナ〜」
「はい…」
「好きだコノヤロー。どうしようもねェくらい、好きだー」
更に顔を赤くするハナにいけない大人の悪戯心が擽られる。
「ハナちゃん。ちょおっと俺の顔見てみ」
「?」
未だに赤みの引かない顔を上に向け、俺の顔を見た。瞬間、俺は小さくキスをする。
「〜〜〜!」
「ははっ。真っ赤」
余りにも恥ずかしかったのか俺の胸に真っ赤に熟した顔を埋める。その仕草にキュンとしちまったじゃねーか。
苦しい心臓をどうにかしたくてハナを抱き締めるが、逆効果だ。
更に心臓を締め付ける。
いつかハナに殺されるんじゃねェか?
だが、そんな死に方も存外悪かねーな。
そう思う俺は、よっぽどの馬鹿か?
いや、
世界一お前が好きなだけです
(玄関でいつまでイチャついてるつもりアルか?)
(ほっときなよ、神楽ちゃん)
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