キミ、依存症
「あ、晋助帰ってきた」
「よォ、良い子で待ってられたかよ」
「子供扱いすんじゃねーよハゲ」
「ぶち殺されてェのか、テメェは」
京での商談を終え、多少の疲労感を持つ身体を引き摺って船に帰ってきてみればこれだ。
可愛くねー出迎えなこった。
「今日は何してたんだ」
取り敢えず、部屋の定位置である窓付近に腰掛けながら他愛もないことを問い掛けた。ハナは俺のとなりに座るとニカリと笑う。まあ、可愛くねーわけじゃねェ。
「今日はまた子と買い物!」
「……呑気なもんだな、お前ェ」
まあ、俺ァお前がそうやって呑気に平和ボケした面で生きている様が、嫌いじゃねえ。こんなこと俺が思うたァ、どうかしてる証拠だ。…原因は分かりきってるがな。
「んで、これ晋助にお土産!」
「……土産だァ?随分洒落たことすんじゃねーか」
ごそごそと着物の袖を探り、お目当ての物を探す。軈て見付かったのか表情を明るくさせ、一つの包みを俺に差し出した。俺はゆっくりその包みを受けとると、ハナは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「開けて開けて!オープン!」
「…分かったから少し黙れやクソガキ」
「ガキじゃねーし!」
鼻息を荒くして怒りだすハナを余所に俺は包みを開いた。中にはいっていたのは、煙管だった。
「ほう…随分と良いやつじゃねェか」
「うん!気に入ってくれた?」
「…まあ、悪くねェな」
性格上、素直に気に入ったと言えない。それを分かっているハナは嬉しそうに笑った。言わなくても伝わったようだ。でもよォ…言わなきゃ伝わんねェ事もあんだろ。
「ハナ、もっとこっち来い」
「…?うん」
小首を傾げながら近寄ってくるハナの腕を引き、己の腕の中に閉じ込めた。「わ!」という色気もクソもねェ声に自然と笑えた。
「愛してんぜ」
「クサイよ、晋助」
「黙っとけや」
「私も愛してんぜ」
「真似すんじゃねェ」
にひひと笑うハナを小突く訳でもなく、抱き締める腕に力を加えた。ぐええと声が聞こえたが離す気なんざ、さらさらねェ。
俺もどうやら末期のようだ。こんなお前が愛しいなんてな。
…こりゃ、一生側にいるしかあるめーよ。
手離す気なんざ、ねェがな。
End
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