1章 精霊の願い1

「おおーすっげー!」
少年たちが祠から出ると、見渡す限りの白がそこにあった。見慣れぬ景色に少年が目を丸くして声をあげる。

「なあ、これ雪っていうんだろ?本当に冷たいんだな!」
「僕も見るのは初めてだよ、ぷっちょ。思ったより綺麗なんだね!」

少年に続いて出てきたのは、プチヒーローのぷっちょ。小さな瞳をキラキラさせながら足元の白いものの感触を手のひらで楽しんでいる。少年の背丈の半分もない体を縮めてしゃがみこむ姿はとても可愛らしい。

「すごーい!ホントに一面真っ白なんだね!ねえ、りゅうたろうもすごいと思わない?」

祠の扉をよいしょと潜り抜けてきたのは、少年の何倍もの大きさの魔物、ミルドラースのミー。赤黒いボディと鋭い牙に似合わず、少年たちと一緒になって白の世界にはしゃいでいる。

「別に…何回か来たことあるからそんなに珍しくも感じないな。風が弱い今のうちにノースデンまで行こうぜ」

そんな一人と二匹を落ち着いた物腰で眺めるのは、竜王のりゅうたろう。



少年ルカは三匹の魔物を連れて、『イセカイ』と呼ばれるこの地にやってきた。きっかけは些細なことで、彼の妹イルにあるものをプレゼントするため。ミルドラースのミーが提案したのがきっかけで、この世界で流行っているという夢見のオーブを買いに来たのだ。イルの誕生日が近いというのもあるが、働き者の彼女に日ごろの感謝の気持ちを表したいのが主。ミー曰く、マスターも女の子なんだから絶対こういうの喜んでくれるよ!ということらしい。
ルカはモンスターマスターではないが、長い間牧場で魔物の世話をしてきたため、魔物の扱いには慣れている。実際に魔物を連れて冒険するのは初めてだ。今回は南国から雪国の冒険ということで、母に作ってもらった厚手のコートを着てきた。気合は十分だ。






「ルカ!そっちじゃない、こっち!」
「え、どっち?」
「こっちだってば!ちゃんとコンパス見てんのか?」
「だってコンパス持ってきてないもん」
「え…?」

ルカと話すりゅうたろうの表情が一瞬凍りついた。

「だってー、地図があればなんとかなると思って」
「ならねえよ!ここじゃ日があまり出ないから方角の確認はコンパスなくては難しいんだ!」
「大丈夫だってば!意外となんとかなるってイルも言ってたし」
「マスターがそう言ったからって…これから先が心配すぎる」

表情を曇らせるりゅうたろうに、ミーとぷっちょが近づいてきた。

「細かいことは気にしないの!楽しく冒険ができればいいじゃない。ねー、ぷっちょ」
「そうだぞ。冒険にはろまんが大事だぞ」
「いやまじで心配だから!お前たち浪漫があるのと迷いに迷って飢え死にするのとどっちがいいんだよ!」
「じゃありゅうたろう、お前が先頭な。ここ来たことあるんでしょ?」
「え、ちょっと待て。ルカは仮にも今日はマスターの立場だぞ?魔物に先頭任せてどうすんだよ…」

ルカの発言に眉をしかめる。この牧場管理人はその妹とは違い、思い切った行動や発言が多いのはある意味困ったものだ。

「だって僕道分かんないし。そこまで言うならお前が歩いたほうがいいよ。それに先頭って歩いたことないだろ?」
「……ったく、今日はやけに我儘なマスターだな。ちゃんとついてこいよ!」
「はーい、ありがとりゅうたろう!」

しぶしぶ承諾し、先頭を歩くのはりゅうたろう。その後ろにルカ、ぷっちょ、ミーと続きおかしな配列で一行は歩きだした。



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