祖国のためではなくU
大佐である片岡の乗船している母艦には、精鋭部隊が配置されている。特に、前線部隊には、陸軍からは御幸少尉、海軍からは成宮中尉と真田少尉、空軍からは楊少尉がそれぞれ率いる部隊が乗り込んでいる。
演習開始は明日の8時である。本来であれば自分の持ち場を離れるべきではない御幸は、階級的には上である成宮から呼び出しを受けたのだ。命令であるからには、拒否することはできない。
だが、最初からこの演習には嫌な予感を覚えていた。最悪、定刻に自分が戻れないことも考えられる。信頼できる僅かな部下には、その事を伝え、それでも自分がいるかのように作戦を開始するよう伝えてある。
約束どおり、執務室に尋ねてきた御幸は、大きなマホガニーの机に両肘をつく成宮の前に、通された。
「久しぶりだね、一也」
愛くるしい笑顔で成宮は言った。
「お久しゅうございます」
前傾姿勢を崩さない御幸。成宮がスッと右手を上げると、何も言わずに下士官達は出て行った。人払いしたのだ。部屋の中にいるのは、成宮の他に、准尉である神谷と白河、山岡の四人だけになった。
「仰々しいですね、それほど大事なお話でも?」
あくまで他人行儀は崩さない。成宮がいかに手酷い相手か、過去に付き合った事のある御幸はよく知っているのだ。
「別に。昔の仲間で水入らずの時間を過ごしたいだけさ。一也、顔を上げてよ」
御幸はようやく直立した。
「相変わらず、綺麗な顔だね…。陸軍なんてむさくるしいところにいたら、さぞかしいろんなヤツに言い寄られてるんじゃない?」
「お前の噂はこっちにまで響き渡ってるぜ?上官に腰振って、少尉になったってな」
「あの親代わりらしい片岡大佐とも、デキてるらしいじゃん」
カルロスと白河に下衆な話題を振られ、御幸は眉を吊り上げた。
「片岡大佐を侮辱するなっ!」
「おーこわ」
「何本気になってんの」
二人の言い方に苛立ちを募らせる御幸に、成宮はくすくすと笑った。
「礼儀のなっていない部下で申し訳ないね。片岡大佐と何もないのは知ってるよ。もし片岡大佐と相思相愛なら、一也がおっさんどもに尻を突き出したりするはずないもんね。かわいそうだなー一也。オレが淫乱な体にしちゃったから、好きでなくてもエッチしないと眠れないんだよね〜。はしたないなー」
「………鳴」
学生時代の事を思い出すだけで体が疼く。初めて付き合った相手に、激しいセックスを強要された後遺症は強い。縛られたり、目隠しされたり、薬を飲んだり、焦らされたり…。お互いに若かっただけに、快感もとてつもなかった。
「久しぶりに、確かめてあげるよ」
「………」
予想していた展開ではあったが、いざ実際にこれからこの男達に体を開かれると思うと、虫唾が走った。だが、一つ想定外の事があった。
「一也、脱いで」
「っ、ここ、で、か……?」
そうだ、この執務室でまさか事に及ぶとは思っていなかった。こんな公的な場で、輪姦など、正気の沙汰ではない。
「そう、ここで。大丈夫、あとでベッドにも連れて行ってあげるから。一也の体、早く見たいんだもん」
「くっ…」
命令は命令である。逆らえるはずもない。
「ほら、早くしろよ」
「何いまさら恥ずかしがってんの?上官たちの前ではためらいなく脱いでるんだろ?」
外野の辱めに、不快感を覚えながらも、御幸は仕方なく、少尉の証である略綬(勲章である胸章の簡略化したもの)を外しにかかる。ピンバッチのようにして軍服についているものだから、付けたまま服を脱げばいいのに、律儀に外す行動に、成宮はあざとく気付いた。
「そんなもの、外さなくてもいいだろう?」
御幸は、上官たちに求められ、体を開く時も必ず略綬や胸章などは取り外していた。理由は明らかだ。正直に答える必要はないが、御幸にもプライドがあった。
「自分の恩師にいただいた大切なものを、これから行われる下卑た行為に巻き込みたくないんでね」
それは片岡から頂戴した大事なものなのだ。それをこの穢れた行いで汚したくない。だが、それは成宮の機嫌を損ねてしまった。
「一也」
「っ!」
いきなり万年筆が顔にめがけて飛んできた。鋭利な先端は、御幸の頬に一筋の傷を作ったが、それで済んだのは御幸の類まれなる反射神経のおかげである。
「こっちは穏便にするつもりだったけど、生意気言うなら容赦しないよ。山岡、無理やり脱がして。カルロスも、部屋からあれ持ってきて」
「御意」
大きな体をした山岡は御幸の背後に回り、成宮によく見えるように軍服を引き剥がした。だがカルロスは怪訝な顔つきで成宮を見返す。
「話が違うじゃねえか」
「うるさい!言われたとおりにしろ!」
「はいはい」
カルロスは執務室を出て行った。
一糸纏わぬ姿になった御幸の体を、成宮はカルロスが戻ってくるまで鞭で突きながらもてあそんだ。それだけで喜びを示す体をはしたないと思いながら辱めに甘んじていると、カルロスが戻ってきた。安堵するのもつかの間、カルロスが手にしていたのは媚薬だった。それを飲まされ、成宮の部屋に運ばれた御幸は、明け方頃まで性の餌食だった。
記憶もあいまいで、どういう順番で突っ込まれ、咥え込み、しゃぶりついたのか全く覚えていない。ただ、出しても出しても欲望に果てがなかったことだけは確かだった。
それでも、片岡のために、体を開いた御幸。
途中で、白河がいなくなり、しばらくして戻ってきた事だけはしっかりと記憶にとどめ、なんとか服を着込み、自室に戻れたのは4時過ぎであった。
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