「ニーアさんってカッコいいですよね」

不意にそんな事を言うと、ニーアさんは目を丸くしてこちらを見た。ああ、そのグレーの瞳すらも綺麗だ。いや、その銀髪の一本一本すらも綺麗だ。真顔(といっても表情は変わらないんだけど)のままいると、ニーアさんは少し笑って「何だいきなり。生憎、俺に世辞を言っても何も出ないぞ」と言った。

「そんな!お世辞なんかじゃありませんよ、僕は本当の事を言っただけです!」

胸を張ってそう言い切ると、少し戸惑いながら、そして綺麗に笑いながら「そっか、ありがと」と目を細めて言ってくれた。そんな表情は反則ですよニーアさん!と言いそうになるのをグッと堪える。
人間だった頃の記憶か、はたまた気のせいか。心臓が無い躯なのに、左胸辺りが締め付けられるみたいに痛い。綺麗だ、この人は。外見も内面も、僕なんかが傍に居るのが勿体無いくらいに。僕に無いモノをいっぱい持ってて、こんな僕を受け入れてくれて。しみじみ思う。
ああ、本当に僕は、この人が好きなんだな、って。

「僕、本当に、ニーアさんに出逢えて良かったです」

観る世界、触れる世界、感じる世界がガラリと変わった。こんな外見なのに、変わらず接してくれる。優しい人。それでいて少し腹立たしい。だって、こんな綺麗な表情を他の人にも軽く見せてしまうんだから。こんな黒い部分が僕にもあった事に吃驚で新鮮だ。ほんとニーアさんは、僕の埋もれてた色んな面を掘り出してくれる。
この人に逢えてなかったら、僕は死ぬまで一生、あの暗い館で自分に怯えながら生きてたんだろう。昔の僕なら、仕方の無い事だと諦めていただろう。でも、それは怖い事だと、寂しい事だと、今の僕ならきっぱり言える。

「ほんと、どうしたんだエミール」
「…いえ、なんか、こう…ニーアさんにちゃんと言っておきたくて」

全部は伝えられないけど。でも、少しでもいいから面と向かって伝えたかった。言いたかった事を言った後にブワッと恥ずかしくはなったけど、後悔はしてない。ニーアさんはクスクスと笑いながら、僕の頭に手を乗せた。影が少し近付いたから顔を上げると、さっきより近くにニーアさんの顔があってドキンと心臓が高鳴った、気がした。

「俺も、エミールに出逢えて良かったと思ってる」

その瞬間。顔、もとい頭が急激に熱くなるのを感じた。そんな綺麗な顔で、そんな優しい瞳で、そんなカッコいい声で、そんな僕を喜ばせる言葉をサラリと言わないでくださいよ。
だって、だって、これ以上、今よりも、ずっと。
ニーアさんの事、好きになっちゃうじゃないですか。

土に埋もれた恋心

エミールが一番乙女だと思う
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