クリスマス

「綺麗なイルミネーションね」
 塾帰り、暗くなった住宅街を遊矢柚子素良はゆっくり歩いていた。もうすぐクリスマス、寒さは一段と増してきたが街のいたるところが綺麗にイルミネーションされている。
 寒さも忘れて3人は何度も足を止めた。どのお店も家も、思い思いに綺麗に飾られている。
「うちももっときれいに飾り付けた方が良かったかしら?」
「十分だと思うよ。それにクリスマスといえばイルミネーションよりクリスマスケーキでしょ、やっぱり」
 花より団子なのか、食べる事ばかり、と柚子と遊矢は笑った。
「でもイルミネーションもすごく綺麗だよね。僕感動しちゃった」
 そう言い雪だるまの形のイルミネーションが玄関先に置かれた家を見ながら素良は呟いた。知らない人の家だけどおいでおいで、と歓迎されているような気持ちになる温かい雪だるまだ。
「素良の前住んでたとこはイルミネーションしてなかったのか?」
「うん、そういうとこじゃなかったし12月24日も25日も特別な日じゃなかったよ」
 遊矢と柚子は少し寂しく感じたが素良は何とでもないような顔をしている。でも今日は楽しそうだ、見るもの全てが珍しいとばかりにあちらこちら見ている。
「イルミネーション気に入った?だったら来年はもっと力入れてるところ行かない?私良いところ知ってるわ」
「いいねー行こう行こう」
 素良が楽しそうにくるくる回った。
「サンタさんも来てくれたらなー欲しいもの一杯あるのに母さんケチだからさー」
「遊矢は欲張りなのよ。サンタさんはいい子の所にしか来ないしもらえてラッキーよ。素良はクリスマスプレゼントもらった?」
「僕?僕はねー……うん、もらったよ」
 少し考え込んでからとびっきりの笑顔で言った。今までこんな楽しい経験はしたことが無い。クリスマスも何もない人生だったのだ、こんな楽しい事が出来るなんてサンタクロースからのプレゼントのようだ。
「そう、なら良かった」
 素良の嬉しそうな顔を見て柚子も笑った。
 クシュ、遊矢がくしゃみをした。
「そろそろ帰ろうか」
 今年のクリスマスはどうなるのだろう、イルミネーションを見つめる素良の瞳は同じくらい煌めいていた。


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