不思議な男


簡素なレストランで昼食を終えたシセラは、小さな雑貨屋で買い物を楽しんでいた。

レイも一緒に見回ろうと誘ったが、興味が無い、と切り捨てられ、仕方なく一人で店内をぶらつく。

自分の仕えている主人を外に待たせるのは何となく気がひけるが、これはシセラにとってまたとない機会だった。


レイの誕生日も、もう近い。

だから、良いものが見つかればここで、そのお祝いを買おうと決めていた。


繊細なデザインのカトラリーや、花の種、それに一角ではあるが本も置いてある。

様々な小物に囲まれながら、どれにしようかとシセラは頭を悩ませた。


今までに一度も、誰かの為に買い物をしたことがない。そもそも外出すらしたことが無かったのだから、当たり前なのだが、シセラは何度も何度も同じ場所を往復し、陳列する雑貨を吟味した。


「…」


何を渡せばレイに喜んでもらえるだろうか。


「どうしよう…」


うっかり漏れた呟きが誰かに聞こえたのだろうか、


「どうしたんだい?」


横にいた人が穏やかに問いかけてきた。



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