レイがいるはずの書斎に向かえば、いつものように分厚い本を抱えソファに座っていた。
シセラが部屋に入ると、顔は本に埋めたまま視線だけをこちらに向ける。それから、また本を読み始めた。
「…あの、マスター…」
控えめにシセラが口を開く。しかし、レイは何の反応も見せないので、シセラは次の言葉を言い出せない。
「……今日のお仕事は…」
改めておずおずと話し出すと、レイは顔を上げまじまじとシセラの顔を観察した。
「…」
綺麗なルビーの目に射抜かれ、言いかけたままシセラはその場に立ち尽くす。
それから、レイが、ふっと笑うと、
「今日も大人しくしていろ」
と短く言った。
「でも…っ」
レイの判断が納得できず、シセラが声を上げる。すると、それを視線を投げ掛けて制止し、諭すように、
「まだ病み上がりだろう。」
「…はい」
そこまで言われたら、素直に従うしかなかった。
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