シセラは一瞬だけ考え、その本に手を伸ばす。
見た目よりも軽いそれを開き、パラパラとページを捲る。
やはり何が書いてあるのかはさっぱりだったが、絵や写真から、歴史書に近いものと判断した。
そして。
「―え…?」
捲るのを止め、慌てて数ページ戻ると、そこには、長髪で、美形の青年の写真が載っていた。
それは、紛れもなく、シセラの"マスター"。
だが、最低でも十数年に出版されたと見られるその本の中の写真は、今現在のマスターと瓜二つであった。
ガチャ、とドアが開く音が聞こえ、同時に、
「昼食にする。
すぐに何か作れ」
という声も聞こえた。
「…はい。」
シセラは本を仕舞い、出来る限り、何事も無かったかのようにしながら、書架の鍵を閉めた。
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