「チョコは嫌いなんだよ」
心底から嫌そうに呟けば、カルアは大袈裟に驚いてみせる。
「そうなの?」
残念そうにお菓子を袋に戻す。次に、新たに別の駄菓子を取りだそうとするのを、ミナトは目敏く発見した。
「菓子類全般が好きじゃない」
ぶっきらぼうに言って、それを聞きつけたカルアは袋から引き抜いた手に握っていたグミの小袋を再び戻した。
「…つまんなぁい」
「知らねえ」
「魔法でなんとかならないかな」
「無理だろ」
「…!」
ほんとは使えるんだから、と唇を尖らせながらぼそりと呟き、ジトッとした視線を隣に向ける。ミナトがその声も視線も黙殺すると、完全に不貞腐れた。
頬を膨らませ、カルアは先程ミナトに突き返されたチョコバーを出し包みを開けると、もそもそと口に含む。
何度かもぐもぐと噛みしめているうちに、いつの間にかカルアのむくれた顔が綻んでいく。一口分を飲み込む頃には、目元は幸せそうに細められていた。
「お前って単純だな」
完全にご機嫌に戻ったらしいカルアに、その様子を横目で見ていたミナトは至極正直な感想を漏らした。
「んー」
否定なのか肯定なのか微妙に曖昧な返事をし、カルアは最後の一口を食終えた。
「前、」
同時に前方を指差し、遠くでこちらを向き立ち止まっている仮装ご一行を示す。
カルアはミナトを見ると、小さく微笑んだ。
「追いついた方がいいよね」
ミナトも同意する。
「そうだな」
そして、小走りに、人混みをうまく抜きながら、不思議そうな顔の友人たちのもとに駆け寄る。
「悪い」
短い謝罪を口にするが、どうやら皆の興味の対象は違うらしい。
「ねえ、今一緒にいた子って、誰?知り合い?」
女子の一人が不思議そうに訪ねる。
「え…?」
誰、って。ミナトは心の中で呟いた。
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