―…。
あの大木の下を出発してから間も無く、莎夜は知りなれた気配―正確には魂―を感知した。
何百年と、老いることも、消えることも、変わることもない、魂。
そんなモノを持っているのは、ただ一人。
「凰鬼」
肩越しに姿を捉えて、その名を忌々しそうに口にした。
「相変わらずの態度だね」
苦笑いが似合いそうな台詞に、だが凰鬼は喜びを表していた。
「…」
冷ややかな視線を受け止めて、
「それで、あの返事は?」
期待を込めて凰鬼が尋ねる。
「何時聞いたって、変わらない」
「…別にいいけどね」
ふぅ、と莎夜の返答に溜め息を吐いた。
「だから、君が心変わりするように永遠の時間を確保したのだから」
自分の首をチョンと触る。
莎夜の首の刻印を示しているようだった。
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