夏川翔 編(翔×望 2)


(はぁ…今日も美人だ。)

一つ前に座っている瀬川の後ろ姿を見つめながら、そっと息を吐く。

(あのうなじに噛み付きてぇ〜!)


週にたった一回しかないこの授業では、俺は勉強なんかそっちのけでもっぱら瀬川の観察に勤しんでいる。

瀬川は色も白く、可愛いというよりは綺麗系だ。

こいつの兄貴も相当なイケメンらしいから、美形一家なのだろう。なんとも羨ましい。


「なぁ翔、ここなんだけどさ…」

そんな事を考えていたら突然瀬川が振り返ってきたので、かなり驚いた。

「ん、あ…何?」

「なんだよ翔、寝てたのか〜?」

「まぁちょっとな…」

「ふーん、眠いならいいや。あ、よだれは垂らすなよ。」

「………。」



(しまったぁぁぁぁ。せっかくこいつと話すチャンスだったのに…!)

でもまさか、「お前に見惚れてました」なんて言えるわけない。

「はぁ…」

「ん?どうした?」

(…だから、首傾げる仕種が可愛いんだよ!)

「いや別に…。」



瀬川と会えるのは嬉しいが、この授業中俺の心臓はかなり忙しく働き回っている気がする。

見てるだけで何もできないし。

生殺しだし。

溜息も増えたし。


(あーあ、これじゃあこの授業を受けて良かったのかわかんねぇな…)


瀬川に聞こえないように、そっと溜息をつく。

「あ、そうだ翔。」

再び振り返った瀬川と目が合う。

「今日の放課後、久しぶりにゲーセン行かね?」

「!?」



すみません、やっぱり前言撤回します。






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