SSつめあわせ

秋の日はつるべ落とし

※現パロ



「善逸には秋が似合うね」
「そう?」


 泣く泣く五円を払って買ったビニール袋が、私たちのあいだでがさがさと揺れる。こないだせっかくエコバッグ買ったのになぁと、そう肩を落とす善逸をなぐさめるみたいに、取っ手をひとつずつ持って歩く帰り道。秋の日はつるべ落としとはよく言ったもので、ついひと月前はまだ空が青かったこの時間も、もうすっかりオレンジ色に染められている。

 ちょっぴり肌寒い秋風が吹き抜けて、善逸の髪を揺らした。彼の羽織るシャツがふわりとはためいて、ちいさなボタンが夕陽を照り返した。


「どうしたの、楽しそうな音させて」


 このあいだの善逸の誕生日、私は洋服をプレゼントした。半袖と長袖のシャツ、1着ずつ。嬉しそうに笑った善逸にはまだ教えていない。どうしてふたつ贈ったのかを。


「ううん。シャツ、よく似合ってるなと思って」
「ありがとねえ。半袖のほうも、ちゃんと来年着るからね」


 その返事につい目を見開いてから、笑みがこぼれた。なんだ、善逸にはお見通しだったんだ。今年の秋も冬も、季節が巡ってまた夏がきても、きっと私たちが一緒にいられるように、そんな願いを込めたおまじないは。

 善逸には秋が似合うね。でもきっと、冬も春も夏も似合うと思うんだ。だからきっと、あなたの隣でたしかめさせてね。暮れなずむ空の下、やわらかく視線が絡みあった。


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