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 永遠にエチュード*

「ねーモブリットってさ、」

渡される書類に目を通しながら、ハンジは横に控える部下を見上げた。

「何ですか、あ、ここサインお願いします」

当の部下、モブリットは上司の無駄話を適当にいなして書類の空欄を指差す。

「なまえのこと好きでしょ」

「は?!な、何言ってるんですか!」

この場にいない人物の名前に動揺を隠せない彼に、腹を抱えて笑いたくなる衝動を堪えた。
本当にモブリットってわかりやすいな。諜報活動は絶対向いてない。

そんな上司の心中は露知らず、モブリットは報告書を抱え、部屋を後にする。

ハンジは副官のいなくなった研究室で、机上の飲みかけのカップに目を光らせた。







モブリットは覚束ない足取りで兵舎へと辿り着き、私室に滑り込んだ瞬間壁に体を預けた。

どくどくと全身の血管が脈打ち、血液は一点に送り込まれる。

明らかに正常ではない。
心当たりはただひとつ。

荒い呼吸を気休めに落ち着かせ、どうにかこの息苦しさをやり過ごそうと思案していると、うっかり半開きだった扉から見慣れた顔がひょこりと覗く。

「え、モブリット大丈夫?どうしたの?!」

よりによって何故彼女が。
彼は愕然とし、乾いた唇を噛んだ。

「なまえ?!何で…」

「ハンジさんがこの書類届けて来てって…」

なまえの口から出た上司の名に思わず吐き捨てた。

「やられた…!!」

「な、何が?」

戸惑いつつも、なまえは同僚を心配し駆け寄る。

「っ…ハンジさんだよ!」

やけくそで上司に怪しい薬を飲まされたらしいことを説明すれば、なまえの顔色が変わる。

ハンジは度々部下を試薬の実験台にしようとし、多くの班員がその被害に遭ってきているからだ。

なまえは、同僚の状態をハンジ班持ち前の観察眼で分析する。
額に浮かぶ汗、紅潮する肌、乱れた呼吸、順に視線を下げ、恐る恐る問う。

「ねぇ薬ってまさか…」

「…書類は後で確認するから、出て行ってくれるかな」

いつもハンジ以外には基本的に温厚な彼の眉は顰められ、見るからに余裕を失っている。
いくら去れと言われても、ぐたりとしんどそうな彼を放ってはおけない。
件の上司を問い詰めるという手もあるが、そう簡単に解毒薬を渡してくれるとは思えない。

なまえは意を決して片手を膝に伸ばした。
心臓がばくばくと疾走している。

「わ、私じゃ、駄目…?」

「な、なまえ?!やめてくれ、…っ」

ゆっくりと太腿を這い上がる白魚の指。
布越しに肌を触れられただけでぞくりと背筋に劣情が走る。
モブリットは反射的に腰を引くも、なまえは投げ出された足の間に一歩踏み込んだ。

弱々しく抵抗する彼に最早普段の頼もしい面影は無い。
顰めた眉や、浮き出る喉仏がやたら色情的に映るのも薬のせいだろうか。
昼間に訪れた濃密な空気にごくりと熱い唾を飲み込む。
逸る胸に任せ、脚の付け根に置いた手に力を込めた。

「モブリットの苦しむとこ、見たくないの」

「っ、なまえ…」

女声の囁きですら、モブリットの劣情を増幅させる。
切羽詰まった掠れ声を合図に、なまえは彼らしくきちりと装着してあるベルトを徐々に緩めた。

「うぁっ…!」

その中心に触れた時、悩まし気な呻きが上がる。
汗ばむ掌で欲の塊を包んだ彼女はそのままゆっくりと撫で付ける。

「く、ぅ、なまえ、」

残る理性がなまえの手首を掴むが、力が入らない。
モブリットは薬の効能に抗えず、同僚の背中を床に押し倒した。
熱にふやけた頭を薄い肩に預ける。
ぜいぜいと不規則な呼吸が彼女の耳元にぞくりと響く。

「っ、ごめん、こんなつもりじゃ…!」

彼は自分が情けなくて仕方なかった。
曲がりなりにも部下を持ち、巨人と戦ってきた一兵士がたかが薬の一口に負けてしまう程度の意思だったとは。
言い訳じみた謝罪で許されるとは到底思っていないが、巻き込んでしまった彼女には申し訳が立たない。

「モブリット、謝らないで…」

不意に頬に手が添えられ、顔を上げれば自責の念に駆られる彼をうっすらと潤んだ瞳が見つめていた。
情欲に枷の外れたモブリットはやけに紅い唇に自分のそれを重ね、彼女のベルトに手を掛ける。
強引にズボンをずり下げ、湿った場所へ息つく暇も無く怒張を突き立てた。

「あぅ!」

「く、はっ…!」

うねる胎内に腰を打ち付けると呼応するように締め付けが強くなる。
欲望の渦中でなまえは自分に覆いかぶさる背中にしがみついた。

「っ、ひん、モブリットっ、あ、ぅ」

「なまえ…」

突然の挿入にぎゅうぎゅうと跳ね返していたそこも、次第に滑りを帯び、熱情を迎え入れてゆく。
薬も手伝い、沸騰する意識の中で彼はうわ言のように呟く。

「なまえ、後で…殴ってくれ、俺のこと」

「…いいの、ふぁ、モブリットになら…何されても。」

「っ…!」

それは長年求めていた関係の結果である筈なのに、戸惑う自身がいた。
もう清い友人では居られないと言うのに、一体どこまで彼女は純真なのか。
いつだって素直で自分に懐いてくれる所は訓練兵時代からなんら変わっていない。
この状況に置いても澄んだ眼差しと、相反する下腹の痴態に欲の塊はより膨らむ。
モブリットはなまえをきつく抱き締め、胎内を白濁で汚した。






モブリットが研究室に戻れば、眼鏡をきらめかせたハンジが待ってましたと言わんばかりに出迎える。

なまえは彼の部屋で休ませていた。

「やぁモブリット!なまえとは上手くいった?!」

予想はしていたが全く悪びれる様子の皆無な上司に流石の彼も堪忍袋の尾が切れた。

「分隊長今日という今日はいい加減にしてください!!!!」

その後ハンジが部下にこってり絞られたのは言うまでもなく、夜遅くまでいつもの倍の報告書をモブリットの監視付きで書かされる第四分隊長の姿があったという。









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