羊水に溺れる*
淫靡な水音が夜の静寂を端から埋めてゆく。
月明かりに弛緩と収縮を繰り返す爪先が浮かんでいた。
「ふ、んん、っ、はぁ」
なまえはシーツを握りしめ、歯を食いしばり波のように襲い来る感覚に耐える。
何故なら神経が絶頂に集中しようとする度、中断されてしまうことをかれこれ数十分は繰り返されているからだ。
意図的に放置された熱情は薄まるどころか温度を増し下半身に蓄積していく。
これ以上我慢をすれば頭がどうにかなりそうだった。
既に十分過ぎる程潤みきったそこは容易く二本の太い指を咥えしゃぶっている。
透明な蜜は指の隙間から溢れ、図らずも潤滑油となり無骨な指先の抽送を助けた。
エルヴィンは切羽詰まって短い呼吸を繰り返すなまえとは対照的に、ゆっくりとした動作で完熟した秘所に埋れ、硬く腫れた蕾に触れる。
そして掬い取った体液を親指の腹で撫でつけるように遊ばせた。
「ふ、ぁ、もう、っ…!」
もう無理だと言わんばかりに、なまえの目尻から生理的な涙が溢れ出す。
彼は痴態を青い目で舐めくつりと笑った。
「もう、何だ」
震える頬に顔を寄せ、白々しく聞き返してやる。
熱い吐息を漏らす口はだらしなく紅い舌を覗かせながら懇願した。
「団長が…っ、欲しい…」
辛うじて残った羞恥心が切望の声を掠れさせる。
「聞こえないな」
無情な一言は、彼女の理性と尊厳を奪う合図だった。
胸の中心で震える飾りを爪で肌に押し込むと、上半身が大きくしなる。
同時に前戯のキスで濡れた唇の隙間から白い歯がちらついた。
彼は唾液まみれの口内でぬらぬら動く舌先を自分のそれで捉え、次の言葉を誘う。
「っは、あ、だんちょうの、挿れて、欲しい…っ!」
月光に光る糸を引き、雛鳥に似て必死に唇を啄ばむなまえを引き剥がし、ベッドに押し倒す。
抱えた腿には愛液が伝っていた。
天に向けそそり立つ自身を一息で埋める。
崩れる寸前の果実はじゅぷじゅぷと卑猥な音を上げ、彼女は嬌声も出せず背を仰け反らせた。
膣壁は隙間なく怒張に吸い付き、雄を受け入れた悦びにうねる。
エルヴィンは悩ましい締め付けの快感に息を吐いた。
抜けそうな程腰を引き、次には最奥を突き上げる。
最深部を先端が捏ねる度、なまえの腰が上下にひくついた。
その動きは性器を更に深みへと誘うかのようだ。
「こらなまえ、腰を動かすな。はしたない」
「は、むり、っ…勝手に動いちゃ、あぁ!」
エルヴィンは咎める視線を彼女に向けるが、既に性感に沈んだなまえには思考と肉体の解離が出来ない。
だらしなく口端から唾液を滴らせ、欲に染まった瞳で彼を見上げる。
「仕方がないな」
「きゃうぅ?!」
彼は片手を下腹部に当て一気に押さえ付けた。
物理的な圧迫により狭まった膣内は性器との摩擦力を高め、彼女を形無しにしていく。
「や、ひは、あぅ!そ、れ、やめっ、てぇ!」
胸板を押し返す非力な腕もお構いなしに、ぐりぐりと子宮口を甚振った。
「ひ!やだ、も、はなし、あん!」
悲壮な喘ぎはエルヴィンの凌辱に拍車を掛ける。
「や、やだ、ひん、やだぁ!ふぁあ」
胎内がきゅうきゅうと鈴口を吸い上げ、絶頂が近いことを知らせると彼は律動を止めた。
そしてあっさりと性器を引き抜く。
どうして、潤んだ瞳一杯にそう問いかける上目遣いに、エルヴィンは最早彼女は自分の手に堕ちたと確信した。
「嫌、なんだろう?」
「ッ…!」
口角を吊り上げた自分はさぞ悪党に映っていることだろう。
歪んだ征服欲すら性器に血液を送る。
なまえは何も言えず、羞恥と愛欲の狭間で分厚い掌の下の子宮をひくつかせた。
彼は寸止めされ行き場の無い快楽でわななく体を抱き起こし、腰に跨らせる。
「欲しいなら、自分で挿れればいい」
白い手を優しく握り、硬くなった性器に触れさせる。
彼女の体液に塗れたそれはぬらりと光沢を持ち凶暴さを増す。
なまえは生唾を飲み、恐る恐る怒張を握った。
ゆっくりと腰を落とせば、ひくつく中心が膨らんだ欲の先に触れる。
それだけで背筋に快感が粟立ち、軽い絶頂に全身が硬直した。
「は…っ、も、無理、これ以上は、ッ」
情けなく弛緩しずり落ちそうな下半身を、男の首に腕を回すことでなんとか耐える。
エルヴィンは目の前の腰を掴み、いきなり下から突き上げた。
「っあー!」
崩れ落ちるなまえの太腿を固定し、彼女の弱点である膣奥を執拗に穿つ。
「は、あ!あん、くぁあ!っ、ひ…!」
「ッ、」
下腹部がふやけ、このまま一つに溶け合いそうな錯覚が脳内を過ぎり、なまえの視界は白く霞む。
エルヴィンは痙攣する胎内を欲のまま白濁で満たす。
やがて力尽きくたりと胸元に倒れ込む汗ばんだ肌を腕に囲い、愛し子を抱く様に首筋に顔を埋めた。
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