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 ユアマイシャイン

※現パロ







それは久々の休日のことだった。
エルヴィンはコーヒーを片手に今思いついたように妻に提案する。

「なあなまえ、いつも一人で家に居ては退屈だろう。家族を作るか」

「へ?!」

なまえは拭いていた皿を危うく取り落としかけた。







「どれでも好きなのを選ぶといい」

仕切られたショーケースには愛らしい仔犬や仔猫が無邪気にはしゃいでいる。

家族を作ろうと言われて不健全な想像をした自分が少し恥ずかしい。

エルヴィンに促され、端から順に動物たちを眺める。

どれでもと言われても、決められないほど皆可愛い。
しかし、スコティッシュフォールド、ゴールデンレトリバー、血統書の名が連ねられたその下には安くない値札。

思わずその数字に目を剥いていると、隣の男が苦笑する。

「お金のことなら君は気にするな。何の為にここのところ残業続きだったと思ってるんだ」

なまえは他意の無い笑みとショーケースを交互に見て暫し悩むが、やがて複雑な思いを振り切るように仔犬たちから離れた。

「や、やっぱりいらない!」

「なまえ?」

驚く夫をよそに、半ば強引に店を後にした。






「…無理に連れ出して悪かったね」

エルヴィンは公園のベンチで待たせていた妻に、すぐ近くの喫茶店で持ち帰ったカフェオレを渡す。
自分も珈琲を口にしながら隣に座ると、何故か元気を失くす彼女に優しく話し掛けた。

「ち、違うの!ただ…」

まだ夕方には少し遠い時間、遊具や砂場では親子連れで賑わっている。
なまえは躊躇いつつも続けた。

「私ね、別に何もいらないの。貴方が居てくれたらそれでいいから…」

再び申し訳なさそうに口ごもるなまえと対照的に、エルヴィンの胸には温かい気持ちがこみ上げてきた。
知り合い、付き合うようになり、そして一緒に暮らすようになっても、いつも変わらず真摯で謙虚でいる健気な妻が愛しかった。

「そうか…明日は早く帰れるように努力するよ」

「ありがとう」

その言葉になまえの表情が華やぐ。
エルヴィンは夕刻前の風に乱れた妻の柔らかな髪を撫でつけた。
お礼を言いたいのはこちらの方だ。
さっさと家に戻って、思う存分抱きしめてやりたいのを堪え、細い肩を引き寄せる。

「あっ!」

その時なまえが足元に何かを見付けて勢い良く立ち上がった。
エルヴィンも視線を倣えば、いつの間にか薄汚れた仔犬が近寄ってきていた。
首輪もなく痩せた犬は一目で野良犬だとわかる。

「寒いのに可哀想に」

「うん…」

なまえは暫らく地面にしゃがみ込み人懐こい犬と戯れていたが、決心し、エルヴィンを振り向く。

「ねえ、この子飼ってもいい…?」

「もちろん」

即答に、彼女は満面の笑みで仔犬を抱き締めた。

「そうと決まればさっきの店で餌と首輪を買おう」

「うん!」

飛び跳ねかねない喜び様の妻に満足し、連れ立って歩きながら彼女にだけ聞こえるようひそりと囁く。

「来年の今頃には人間の家族が増えていると嬉しいんだがね」

「っ…!!エルヴィン!!」

耳まで赤く染めるなまえの頬に軽く口付け、寒空の下影を重ねた。








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