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 a mischievous man

突風が吹いたと思えば左目のちくりとした痛み。

外で演習中だが、兵舎の影に駆け込んだ。

「どうしたなまえ」

私を目ざとく見つける憎たらしい影。

目の前に立ちはだかる大男は、理由を聞くまで去ってくれそうにない。

「何でもない、目に塵が入っただけ」

逸らした視線は強引に顎を掴まれることによって戻された。

「見せてみろ」

「いたたたた!ちょっと何するの!」

青くて透き通った瞳にほんのちょっとだけどきりとしたら、頬に鋭い痛みが走る。

片頬を抓り上げられたのだ。

いくら手加減しているとはいえ、普段鍛えていない部位をいきなり抓られたら誰だって痛い。

生理的な涙が目尻に溢れる。

いたいけで可憐な女性兵士に暴力を振るうとはなんて上官だ。

未だ頬を摘まんだままの大きな手を腹立ち紛れにべしりと払ってやった。

「取れたな」

「へ…?」

試しにぱちぱち瞬きしてみれば確かに左目の痛みが消えている。

「ああそうだ、この前頼んだ資料、後で団長室まで持ってきてくれ」

肩を叩いてさっさと遠ざかる背中に文句の一つでも言ってやろうとしたのに、ごく自然に、しかも無駄に爽やかに微笑むものだからタイミングを逃した。

そんな簡単な笑みで世のご婦人方は騙せても私は騙せない。

くそう絶対資料を持って行った時仕返ししてやる。

それまでの悔し紛れにまだ地味に疼く頬をさすった。












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