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 窮鼠猫に噛まれる*

「団長、逃げちゃ駄目じゃないですか」

咄嗟に普段殆ど使われない開かずの間状態になっている資料室に身を潜ませたのが失敗だった。

一度見つかってしまえば、其処は密室同然だからだ。

エルヴィンは体内に蓄積する熱に耐え切れず、壁際の本棚に寄りかかった。

大きな体がずるりと床に座り込んだのを合図に、なまえは埃っぽい資料室へ一歩足を踏み入れる。

「あーあ…もう限界みたいですね」

子供のおもらしを嗜めるような口調と困った顔に怒りを覚えた。

何か言い返してやろうと思ったがエルヴィンの口からは吐息しか出ない。

コーヒーに混入された媚薬は、じわじわと、そして確実に身体を侵食していた。

「大丈夫ですよ団長、今楽にしてあげます」

コツコツと規則的に響く靴音は、自分が優位に立っているという絶対的な余裕だった。

楽し気に見下ろす様は新しい玩具を見つけた子供のそれだ。

「っ、君は、…自分が何をやっているかわかっているのか。上官に対する反逆罪、兵法会議に掛けられてもおかしくないんだぞ」

なけなしの威厳を振り絞り、薬のせいかやたら重たい頭を上げた。

「反逆?あはは!ご冗談を。」

けらけらと笑うなまえに怯む色は一片も無い。
片膝ついた彼女と目が合う。

頬に手を添えられただけで背骨に快感が走った。
思わず眉を歪めたのを嘲笑され、恥辱に唇を噛む。

「私は見たいだけです。貴方のその澄ました仮面が剥がれるのを」

「…性悪だな」

「好奇心旺盛と言ってください」

言うなりなまえはエルヴィンの股間に手をかけた。
布の下で窮屈そうに収まっていたそれを引っ張り出し、根元から扱く。

途端に今迄とは比べ物にならない快楽が襲う。
熱がどんどん中心に集まってゆき、腰が動きそうになるのを歯を食いしばって耐えた。

平時であれば兵士とはいえ女一人の腕を捻るなど造作ないが、なまえの肩を押し退けようとする手は自分でも驚くほど弱い。

「団長?ご自分のものなんだから分かりますよね?ここ、すごいことになってますよ」

確認するまでもなく、エルヴィンの性器は反り返り痛々しい程勃起しきっていた。

「なまえ、はな、せ!っ、ぐ」

なまえは先端を口に含み、本来なら排泄するための小さな穴を舌先でぐりりと掘った。
ぬるぬる溢れ出す透明な液体を舌の上に舐めとって、上司に見せつける。

「だんちょ?欲しいって、言ってみてくださいよ」

エルヴィンの腿を挟んで膝立ちに見下ろせば、青く大きな瞳が対峙した。
最後のプライドだろうか、逸らそうとしない目は辛うじて睨んでいるとわかる。

「……」

潤み、うっすら充血した目は
男性のものとは思えぬ色気だ。
男が上目遣いに弱いというのはこういうことかと、溜まった唾を飲み込んだ。

「ふふ、仕方ないですね、目がおねだりしてますよ?」

わざとゆっくりズボンと下着を下ろす。嗜虐心の満足で自身も濡れていた。
エルヴィンに抵抗する隙を与えないよう、一息で怒張を咥える。

「………!!!」

エルヴィンは全身を貫く衝動に喉を仰け反らせた。
その質量になまえの腰も震える。

「は、あ…声も出ないくらい気持ちいいですか?」

意図的に膣内を締めてやると、悩ましい声が上がる。

「う、く!」

ここに来て尚性欲に屈服しまいと喘ぎを堪える様がよりなまえの支配欲を煽った。

「は、ッ…どけろなまえッ…!!」

腰を引こうとする手を退けて、さらに深く包み込む。

「だ、め」

「う、ぐっ…、ッ、は」

しかめた眉間から滲む汗を拭い固く結ばれた唇に舌で割って入った。

暫し口内の蹂躙を楽しんでいる時、
強い力で腕を掴まれたのと、視界が反転したのは同時だった。

目の前には、幾分理性を取り戻したエルヴィンがいた。
なまえは本能的に危機感を抱く。
しかしいくら薬で弱っているとはいえ鍛え上げられた筋肉の質量に押さえつけられた体はびくともしない。

「っ、生憎、下になる趣味は無くてね」

「え、何でそんなに動け、あんっ!」

言い終わる前に再び挿入され、なまえの腰は大きく跳ねた。
構わず律動する動きは先程までのそれではない。

コーヒーに混入させた媚薬が切れたのかと思ったが、寧ろ薬のせいでより拍車がかかっている気もする。

エルヴィンの底無しの体力に、あれよと言う間に形勢逆転しなまえはなす術無く喘いだ。

「ちょ、は、がっつき過ぎ、んぅう!」

気丈に噛み付くが、直ぐに嬌声に変わってしまう。

それなりに経験のあるエルヴィンからすれば、相手の女性の性感帯を見抜くことなど容易いことだ。

弱い場所ばかり執拗に責めているといつしかなまえの目には涙が滲み強気だった表情も緩んで最初の威勢はどこにも無い。

「や、いっかい、はなして、あッ!」

「は、っ…私がそう言った時、君はどうしたかな。自分の発言には責任を持つべきだ」

悲鳴混じりの懇願も虚しく、一層奥を穿たれ視界が霞む。

「ひうぅ!」

「なまえ、謝れ。そうすれば今回の事は水に流してやろう。この一件のみで優秀な部下を手放すのも惜しい」

完全に主導権を回復したエルヴィンは、揶揄するように浅い場所をわざとぬるぬると焦らしながら甚振った。

「は、なんで私が、はぅ、ンンッ!ひ、あッ!」

なまえは悔しさに唇を噛みながらも、続けざまの抽挿に負け涙声で謝罪する。

「ご、めん、なさ、ふああぁっ」

それを聞き届けてエルヴィンは続けた。

「二度とこのような事はしないと誓いなさい」

「あ、ん!も…二度と、やりませんからぁ!お願いだから、ひぁ、抜いて、ぇ、あぅ!」

汗ばんだ上半身を抱え込むと耳朶を甘噛みするついでに囁く。

「仕置きだ。私の気が済むまで付き合ってもらう」

「ひんッ、そんな、あぁあん!」

一点を突けば、なまえは腰を浮かせエルヴィンの性器を一際締め付けた。

「おやなまえ…薬を飲まされた私より先にイってしまうとは、随分だらしがないな」

「やっ、も、やめ…!んう!」

挑発に反応するゆとりすら失った痴態を喉で笑う。

「いい気味だな。私の下でせいぜい反省していなさい」

慈悲の欠片も無い発言は、自業自得とはいえなまえの瞳を絶望に染めた。

見上げれば、普段あまり変化のない口角が嘲りに歪む。

「や………!!」

なまえは悪戯に羊の皮を被った猛獣に手を出したことを心の底から後悔した。









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