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 相乗効果*

ああ最悪だ。

なまえはふらふらと覚束ない足取りで廊下を歩いていた。否、逃走していた。

事はほんの半刻前、ハンジに出された紅茶を飲んだのが始まりだった。

身体中が熱に浮かされ、頭がふわふわする。

酔いとも違う奇妙な感覚に、本能的に危機感を覚えた。

「あれ?もしかして薬効いた?!やべえ実験成功?!」

「な、なにを…」

突然はしゃぎ出すハンジに呂律が回らない口でそう聞くのが精一杯だった。

「いやーモブリットで試そうとしたら逃げられちゃってさ!悪いんだけどちょっとの間ここで実験体になってよ!」

この人は何を言っているのか。
眼鏡の奥で爛々と輝く瞳に目眩がした。

「い、やです!!」

鼻息荒く迫る上司の恐ろしさは巨人のそれだ。
なまえはふらつく脚で研究室を飛び出した。

「あ、なまえ!そんな状態で出歩いたら危ないよ!」

冗談じゃない。それならあなたの所に留まる方がよっぽど危険だ。

捨て台詞は心の中で吐いて、一刻も早くハンジから遠退きたい思いで廊下を駆けた。





何処をどう逃げたかは定かではない。

静まりかえった建物は、気付けば兵舎のあるのエリアまで来ていたようだ。

人影が無いのに安心した途端脱力し、ずるずると床にへたり込んだ。

心臓がばくばくして呼吸が浅く早い。
熱のせいか身体中が痺れたみたいだ。

なまえは自分の肉体の異変に泣きたくなった。
私はこれからどうなってしまうのだろう。
ずっとこのままだったらどうしよう。

ついに壁際に蹲った時、視界にブーツの爪先が入った。

「なまえ?こんな所に居たのか?」

「だん、ちょう…?」

重たい首を上げれば、心配そうな青い瞳が覗き込んでいた。

「下でハンジに会った。試薬を飲まされたらしいな」

低く良く通る声に、意識が覚醒していく。何の根拠もないが、助かったと思った。

「取り敢えずこちらに。立てるか?」

エルヴィンがなまえの片腕を取り上げた瞬間、彼女の体に電流が走る。

今まで経験したことのない快感が肌を粟立てた。

「ふぁ?!」

思わず声が漏れるなまえに構わず手早く抱き上げると、目の前の扉を押し開く。

どうやら偶然団長の私室であったらしい。

膝裏に回された手の骨ばった感触に、意思とは関係なく下腹部が疼く。
触れている部分全てが焼けるように熱い。

なまえはそういえば団長の部屋に入るのは初めてだ。本が一杯あるなあ、などとどうでもいいことを考えて必死に気を紛らわせた。

エルヴィンは部下を促し、ベッドに仰向けに寝かせる。
くったりと抵抗する気力もない彼女を冷静に観察した。
荒い息や潤んだ瞳からして相当薬が回っているようだ。

「媚薬、だそうだ」

ハンジから聞いた薬の正体を明かす。

「びやく…?」

なまえは聴き慣れない言葉に記憶を探る。
びやく?あの惚れ薬とか言われている?
ああ、だからこんなに頭がぼうっとするのか。

「そうだ。何もしなくとも半日程で効力は無くなると言っていた。因みに解毒剤はない」

「そ、そんな…」

絶望しかけたなまえに一つの案が提示される。

「ーが、熱を治めることは出来る。なまえ、どうする」

直後なまえは声にならない嬌声を上げた。
はだけたシャツから覗く鎖骨をエルヴィンがなぞったのだ。

「無論、一人でという手もあるが」

数秒置いて、上司の言っている意味を理解した。
つまりは頼みの綱であったはずの彼はタダで助ける気はさらさら無いのだ。

「ひ、とり…?やったこと、ないです」

「…そうか、」

指で触れた場所に唇が押し付けられ、ぞくぞくと甘い快楽が背筋を伝う。

エルヴィンは自分を跳ね除けようとする手を絡め取って、耳元に囁いた。

「他の男に抱かれるよりましだろう。それともリヴァイを呼ぶか?」

「っや…!!」

目付きの悪い顔を思い浮かべてぞっとした。
確かに兵長に頼むくらいなら、団長の方がまだ優しくしてくれる気がする。気はするがしかし。

ついさっきまでただの上司と部下だったのに、何でこんなことに。

だが混乱に破裂しそうな頭でも選択しなければならない時はやってくる。

「なまえ、答えなさい。苦しいだろう…?このまま薬の効力が消えるまでじっと耐えるか?」

その辛さは想像に難くない。殆ど誘導尋問だが、今は彼に縋るしか方法を思いつかなかった。

「だんちょ…に、してほしい、です」

薬のせいで紅潮した頬で涙目に訴える様は、男には媚びているようにしか見えない。

「….ああ」

エルヴィンは短く肯定すると、服の上から柔らかな膨らみを撫でた。

もどかしい刺激になまえの腰が跳ねる。
ただ触っているだけだというのに、下腹部がきゅうきゅうと収縮を繰り返した。

「ふあぁ、だ、んちょ、なんか、からだがおかしい、です…!」

己の物で無いかのように反応する自身に戸惑い見上げた瞳は何を今更と言っていた。

「薬を飲まされたんだから当たり前だろう」

素っ気なく応えて襟元を剥いで直接揉みしだく。

「あっ、あ、あん、はぅ!」

なまえはされるがままに喘ぐ。半開きの口からはだらしなく舌を覗かせはぁはぁと早く呼吸する様はさながら仔犬のようだ。

「うぅ、だんちょうっ…」

目尻に涙を浮かべた無意識な上目遣いにエルヴィンは喉を鳴らした。

「流石はハンジの薬だな」

そう言うなり胸への愛撫だけで十分潤みきった秘所へ指を埋めた。

「っくあ!」

身を捩るなまえの太腿を捕まえ、内壁を探る。

指を根元から扱く胎内の動きに、自分のそれを挿れればどうなるのかと考えて、ぞくりと欲が膨らんだ。

「っ、はん、ああ、んーっ!」

ただでさえ敏感な部分を容赦無く攻め立てられ、なまえは一際中を締め付け果てた。

ぐたりと骨の抜けた脚を広げると、エルヴィンは手早くベルトを解き、休む暇を与えず塊を穿つ。

「っきゃうぅ!!」

埋め尽くす圧迫感に耐え切れない腰がしなる。生理的な涙がぼろぼろ零れた。

「は…挿れただけでイくとは…恐れ入るよ」

「ひあ、んっ?!ああ、あう!」

薬で従順になっている分、何処がいいのかは直ぐに分かる。

うねる膣内は律動に素直に反応し、怒張を離すまいと包み込む。

エルヴィンは息も絶え絶えのなまえの腕を引き、繋がったまま抱き起こした。

細い腰を支え、下から突き上げる。

「ふ、くっ、んん、っふ、ん〜!」

肩口にしがみつきシャツを噛んで喘ぎを押し殺す仕草がいじらしい。
顎を掴み離せば唾液がだらりと糸を引く。
果実のように赤く熟れた口唇の隙間から舌を絡めた。

限界の近づいたなまえは悲痛な声を上げた。

「っあぅ!やぁ、おく、は!」

「奥がいいのか?」

わざとらしくその場所を弄る。

「ちがあっ!っうぅ」

予想通りわななく彼女に薄ら笑った。

「や、もうイきたくなっぁああ!」

「く、」

絶頂の収縮を堪え、性器を引き抜く。

背を仰け反らせ達したなまえは、重力に逆らわずぐったりとベッドに俯せた。

「何を言っているんだ。まだまだこれからだろう」

エルヴィンはびくりと震える腰を引き寄せ、背後からのし掛かかる。

「っく〜!」

なまえは収まらない波に飲まれながら、媚薬を飲んだのはどちらだったか最早わからなくなり、ただ襲い来る快楽に身を委ねた。












「あれ?なまえは?」

「私の部屋で休ませている」

廊下でエルヴィンとすれ違ったハンジはその言葉で全てを悟った。

「エルヴィン、嘘ついたでしょ?」

「何の事だ」

「私が解毒剤持ってたの、気付いてたくせに」

廊下でエルヴィンにすれ違った時、ハンジは二本の小瓶を持っていた。

できれば経過を観察したいと思っていたから言わなかったが、一方が実験薬ならば、当然もう一つはその効力を解く薬剤だ。

それをエルヴィンが見落とす筈がない。

「さあ、知らないな」

あくまでシラを切り通す彼に肩をすくめる。
涼しい顔で去って行くエルヴィンを見て、なまえは今回だけでは終わらないだろうなと確信した。
自分が元凶とはいえ彼女の事を哀れに思うのだった。















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