バスルーム3*
「待ってくれなまえ!まだ研究が!!」
「あ、と、に、し、て、く、だ、さ、いっ!!」
悲壮な叫びを上げる上司を、ずるずると引きずって、浴室まで連れて行く。
明日お偉方との会議があるからと、モブリットに泣き疲れたのはつい先程の事だ。
ごねる大人を宥め服を脱がせたなまえは、ハンジを浴槽に押し込め、自身はバスタブの傍に立ちながらシャワーの下へと促す。
そしてすぐさま栓を捻った。
「なまえ、もう少し優しくおぶっ!!」
ハンジの悲鳴は熱い湯の中に吸い込まれる。
「全く、好い加減にしてくださいよ!モブリットが可哀想じゃないですか」
石鹸を泡立て濡れた髪に撫でつけ、丁寧に洗いながらため息がこぼれた。
何で調査兵団に入って上司の洗髪を手伝っているんだ。
そう思うと手の力が自然と強くなる。
「なまえ、ちょっと痛いよ」
「だったら部下に文句言われる前にお風呂くらい入ってくださいよ!」
なまえは半ばやけくそで、石鹸まみれの指先をがしがし動かした。
ハンジにもスポンジを差し出すと、しぶしぶといった表情で受け取り、適当にしか洗わないので結局全身なまえが洗う羽目になった。
最後にシャワーで石鹸を洗い流せば、ようやく通常業務に戻れると胸を撫で下ろす。
綺麗さっぱりした身体を拭くハンジに、モブリットに代わってお説教を開始した。
「いいですか?これからは3日に一度は…きゃあっ!!」
「おっと!!」
うっかり足元に置いていた石鹸を踏み抜き、派手に転んで浴槽に頭から突っ込む。
バスタブの底に肩をぶつける寸前でハンジが腕を引き受け止めた。
「大丈夫かい?」
「なんとか…」
「あー服がびしょびしょだね」
折角脱がなくても良い様に浴槽の外で洗っていたのに台無しだ。
今日は厄日だとなまえは泣きたくなった。
起き上がろうと、上半身を起こすが、なまえに跨る形に立つハンジは動く気配がない。
「ありがとうございま…ハンジさん?」
腕はまだしっかりとハンジに掴まれたままだ。
なまえは、嫌な予感に恐る恐る名前を呼んだ。
「なまえ、君って均整とれた体してるよね」
「…はい?」
「ちょっと見せてくれない?」
「何言っ…は、ハンジさん!」
なまえの戸惑う声を無視して腰に跨り襟元に手を掛ける。
ハンジがのしかかったことで、なまえは再び浴槽の底に寝転ぶ羽目になった。
「ああ、やっぱり…」
露わになった上半身にハンジは舌なめずりをし、そこに手を伸ばした。
「ねえ、触ってもいいよね?」
「だ、駄目です、っあ!!」
ぐにぐにと揉まれ、形を変えていく乳房をなまえは涙目で眺めることしか出来ない。
「なまえの性感帯ってどこ?」
興味津々で尋ねるきらきらした眼光に恐ろしくなって激しく首を振った。
「こことか?」
「っやあん!!」
手加減なく爪先で引っかかれた先端に電流が走る。
例えば普通の男なら多少なりとも優しく抱くものだが、単に観察が目的であるハンジには一切それがない。
ただ、刺激に対しどんな反応が返ってくるのか楽しんでいるのだ。
「なまえのここ、こんなに濡れてる。気持ちよかったんだね」
ぬるりと指を滑らせたその場所に、なまえは血相を変え抵抗した。
「お願っ…!そこは、はあぅっ!!」
太腿を閉じようとするも、ハンジの
片膝が滑り込むのが早く、横暴な指先が壁を引っ掻いた。
「ちょ…ハンジさ、それ、やめてぇっ…あぁっ…!」
襞を探るように動く指先は直ぐに彼女の弱点を見つけ出す。
「なまえ、その顔すげえエロいよ…!」
舌なめずりをしたハンジに、なまえの制止は最早一片たりとも聞こえていない。
一際嬌声が高くなる場所を執拗に甚振る。
「っや、ああ!やめ、あぅ、ふああぁ!」
なまえはハンジの手を掴んだままびくびくと腰を震わせた。
「なまえ、もしかしてイったの?」
余韻で微弱に痙攣する下腹部を更に掻き回す。
なまえは悲痛な声で訴えた。
「も、もう触らない、で!あん!」
「何言ってるんだい、これからが本番だよなまえ」
懇願を一蹴し研究対象に瞳を光らせた時だった。
「な、何してるんですかハンジさん!!」
悲壮な叫びにハンジは振り向く。
ただらならぬ雰囲気を察したモブリットが駆けつけたらしい。
幸い彼の位置からではハンジの上半身しか見えない。
真っ青な顔の部下に肩をすくめ、しらを切る。
「何でもないよ。どうかした?」
「この後幹部会議ですよ!忘れてませんよね?!」
「はいはい分かったよ、モブリットは心配性だなぁ。すぐ行くよ」
それでも尚不審の目を向ける部下が渋々踵を返すのを見送り、再びなまえに向き直った。
「なまえ、続きは後でね」
耳朶に響く中性的な声に、ずくりと体の芯が疼く。
無邪気に輝く瞳は毒のように拒絶を蝕み、なまえは熱の回った脳みそで頷いていた。
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