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 バスルーム*

部屋の奥ではシャワーの水音が聞こえる。

よっぽど仕事が溜まっていなければこの時間にお風呂に入るのは知っている。

タオルを片腕に抱えてほの明るい浴槽へ向かう。

シャワーカーテンの向こうに大きな影が映し出されているのを確認して、躊躇わずそこをくぐった。

「なまえ、部屋に入る時はノックくらいしろ」

「だって貴方足音で誰かわかるじゃない」

エルヴィンが此方を見もせず頭からシャワーを浴びているのが何よりの証拠だ。

「それ以前の問題だろう」

「悪かったわ」

適当に謝ってバスタブの縁に腰掛ける。

がっしりした骨格に逞しい筋肉がついて、まさに男といった風貌の背中は、それだけで扇情的だ。

「…それで、こんな時間に何の用だ」

身体についた石鹸を洗い流しながら、ようやく目だけ此方に向けた。

「お風呂入ってると思ったから、タオルを持ってきただけよ」

「…そうか」

馬鹿みたいな見え透いた嘘を咎めないでくれるのは彼の優しさだと思っている。

現に風呂場の壁にはしっかりタオルが掛かっているし、そもそもエルヴィンは風呂に入る時タオルを忘れたりはしない。

きゅっとノブを捻る音がして、水が止まる。

影が振り向く。
手元のタオルを取り上げられて、咄嗟に目線を逸らした。

「こっち向くなら言ってよ」

「男の部屋に堂々と入ってきた奴が何言ってるんだ」

片手で頭を拭きながら、手の甲で私の額を軽く小突く。

水滴がぽたぽたと膝に落ちた。

「あっ、服が濡れたじゃない」

「脱げばいい。風邪引くぞ」

「白々しいわよ」

「その言葉、そっくりそのまま君に返すよ」

タオル一枚を言い訳に夜這い紛いのことをしている私はぐうの音も出ない。

水を吸ったタオルが床にぱさりと広がる。

拾おうとした手は腰と共に掠め取られた。

「っ、は、あ」

お湯よりもっと熱い舌が口内を侵略する。

密着しているせいで、エルヴィンの体温と筋肉の形が手に取る様にわかる。

水分を含んだ肌がじわりとシャツを濡らした。

深くなる口付けに、足が勝手に震え出す。

膝をつく寸前腰に回された腕に力が入り、引きとめられた。

「処女でも無いのに初々しいことだ」

嘲笑と共に舌を捕らえていた唇が離れ膨らみへと下りていく。

「うあっ…!!」

透けた布の上から主張する部分を甘噛みされたことが決定打になり、膝から崩れ落ちた。

後頭部が浅く張った水にぶつかり、大きな身体が蓋をする。

煮え繰り返る熱情を抱いて二人でバスタブに沈んだ。










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