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 帰り道を照らす

「よっと…、あとは林檎だけかな」

なまえは野菜で一杯の紙袋を抱え直した。
隣を歩くモブリットも同じく芋の入った麻袋を肩に担ぐ。

「うん、ああ丁度そこにお店があるね」

小さな露店を見つけ、お目当てのものをメモ通り購入する。
果物の詰まった紙袋を受け取ろとしたなまえの横からモブリットが手を伸ばし、店主に礼を言って荷物を片脇に抱えた。

「あ、モブリット私が持っ…」

「さ、急ごう。夕飯が遅くなる」

なまえはすたすたと進む彼の後を慌てて追い、隣に並ぶ。

「なんか久々だねこういうの」

「そうだなぁ、もう何年前になるだろう」

本来なら食糧の買出しは新兵の役目だ。
今日は新兵たちは一斉の演習で出払っており、それでも代わりの者が居ない訳では無かったが、ハンジが研究の息抜きにと行かせてくれたのだ。

上官になると部屋に引きこもりで書類作業に追われることも多く、久々の町の景色は新鮮だった。

黄昏の中、二人の横を子供達が駆けて行く。

「まってー!」

「おくれるなよ!ほら!」

兄妹か友人か、少女は嬉しそうに少年の手を繋ぎ、仲良く路地へ消えて行く。

微笑ましい光景になまえは目を細めた。

「なまえ」

不意に名を呼ばれ振り向けば、柔らかに笑う同僚の顔。
鳶色が夕日に揺らいでいた。

「ほら」

なまえは子供の真似をして差し出された熱い掌を素直に握り返した。

優し気な見た目に似合わず、ごつごつと骨ばった手、いつの間にか自分を遥かに追い抜いた背。

訓練兵の頃からずっと一緒で、片割れのように感じていたが、こういう時は違いを認識させられる。

「ねーモブリット、今度の休み、ご飯作ってあげよっか。ハンジさん達と皆で食べようよ」

柔らかい目元が更に解れる。
屈託無い笑みには僅かに少年時代の幼さがあった。

「ほんとに?楽しみだな」

「何がいい?」

「…シチュー」

昔から変わらない彼の好物に、つい顔が綻ぶのを抑えられない。

影を並べながら、厩までの距離が一メートルでも伸びればいいと思った。





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