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 ビブリオマニアと紙魚*

あれだけ待ちに待った非番だったのに、いざ休みとなると何をしていいか迷う。

兵長の真似をして部屋の掃除をしてみたり、お給料で買っていた紅茶を淹れてみたりしたが何かピンとこない。

なまえは手持ち無沙汰に部屋を出てぶらつくことにした。
ひょっとしたらハンジくらいなら研究の片手間に構ってくれるかもしれない。
それか資料室で面白い本でも借りよう。

行き先を思案しながら兵舎の階段を降りたところでばったりすれ違う。

「あれ、エルヴィン?」

普段団服をかちりと着こなす調査兵団のトップは、シャツの胸元を緩め寛いだ様子で佇む。
鋭い眼光を持つ瞳も、今日は幾分か和らいでいる。

「今日は非番だったのか」

「貴方も?珍しいわね、でも丁度良かった、構ってよ」

彼の部屋は最奥で人の出入りも少なく静かだし、何より丁度良い話し相手が目の前に居る。
彼女は軽い気持ちで提案した。

「なら私の部屋に来るか」

交渉は直ぐにまとまり、軽い足取りで背中を追った。




なまえはエルヴィンの部屋が好きだ。

堅苦しい外見に似合わず、エルヴィンの部屋は雑然と散らかっている。
散らかっているというよりは本と書類が山積みという方が正しいが。

ベッドにまで積まれた本に苦笑しつつ、傍らの本棚を物色する。
読みかけだった推理小説を手にして、前回読んだ場所を探している間に、彼はベッドに腰掛け別の本を手に取った。

エルヴィンは仕事にプライベートを持ち込まない分、休みの日は休むことに集中する。

彼の部屋は兵法書以外の本を読んだり、ソファでの仮眠でなく、布団でぐっすりと眠る彼を目撃できる貴重な場所なのだ。

貴族の館で令嬢が殺害されるというありふれた内容の本を片手にその隣を陣取る。

エルヴィンはなまえを一瞥し、自分の腿を二度叩いた。
それはこちらにおいでという合図で、断る理由もなく、なまえはするりと膝の間に滑り込んだ。

途端に背中が安心に包まれ、本などどうでも良くなってしまう。
それでもたまの機会だからと年季の入った紙に並ぶ文字の羅列を眺めていると、背後から侵入者。

「ちょっと、」

ちゃっかり脇の下から潜り込み、シャツのボタンを外そうとしている手をはたき落とす。

「構って欲しいんだろう?」

楽しげに耳朶を食まれ、くすぐったさに身を捩るが、いつの間にやら下腹部に回された片腕に逃げ道を塞がれている。

「そういう意味じゃ、」

「頑固だな」

貴方にだけは言われたくないと睨めば、熱を帯びた青が揺らぐ。

「んっ、あ」

無骨な指が下着をかいくぐり、慣れた手つきで乳房を揉みしだく。
二人揃ってゆっくりできた休暇はいつぶりだったかと考えて、忘れていた欲が疼いた。

「そんな三流小説、さっさと捨ててしまいなさい」

全てお見通しと言わんばかりに、目の前に差し出された掌になまえも意地になり、本を抱え込んで首を振った。

「っ、くぅ、んっ」

焦らすように桃色の円をなぞっていた指が、気を抜いたタイミングで飾りを弄る。
うっかり本を取り落としそうになるのを必死に堪えた。

「は、っも、やだぁ、!」

「その本をよこせば止めてやってもいいぞ」

胸を陵辱していた手はいつしか下へ伸びてゆく。
なまえはますます意固地になり、汗ばんだ手で本を掴んだ。
休みだからとスカートを履いていたのが仇になり、簡単に脱がされてしまう。

「っあ、う」

胸への愛撫で十分に潤っていたそこはすんなりと太い指を飲み込んだ。
体内を異物が押し広げる感覚に下腹部が震える。

「も、せめてこれ読んでからにしてっ…!」

「はは、君がそんなに本の虫だとは知らなかったよ」

なまえの懇願も意に介さず、空いた指で熟れた蕾を責め立ててゆく。
脱げた靴から覗く爪先が動きに合わせ固く結ばれるのがいじらしく、エルヴィンは嫌がる顎を掴み口付けを深めた。

なまえが彼の腿に爪を立て、逃れようとすればするほど快楽が邪魔をする。

既に全身が火照り、息は荒く、掻き回された口内から溢れた唾液はだらしなく首まで垂れている。
エルヴィンは男を受け入れる態勢を整えておきながら尚強情さを発揮するなまえに興奮を覚え、彼女を軽く持ち上げると腿の上に乗せた。
下腹から引き抜いた指は透明な粘液を纏い濡れ光る。
これ以上待つのはお互いに酷というものだ。

これから起こることを察し、あがくなまえを抱きすくめ、手早く取り出した怒張を秘部にあてがう。

「や、う、そっ…!っ、ああん!!」

力を入れずとも、彼女自身の体重で
ずぷずぷと沈む杭のもたらす甘い刺激になまえは背をしならせた。
彼も膣内の充足感に長くゆっくりとしたため息を吐く。

「その三流小説と俺、どちらを取るんだ」

「ひ、んうぅ…」

エルヴィンは彼女が完全に手中にあることを確信し再三問うた。

「ほらなまえ、渡せ」

汗に濡れた手から、エルヴィンの手へと文庫本が滑り落ちる。

「…よろしい」

即座に床に落とされた本は、ばさりと乾いた音と共に広がった。

結合したままベッドへとうつ伏せに組み敷かれたなまえは、その無残な紙束を視界の端に捉える。

欲に浮かされた頭で、ぼんやりと考えた。
密室の令嬢を殺したトリックと真犯人を知るのはいつになるのだろうかと。








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