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 溺れる魚*

諜報員。
そう言えば聞こえはいいが、女が出来ることなど、その体で多少の地位と情報を持つ貴族や議員と寝るくらいだ。

そしてなまえにそれを指示したのは紛れもなくこの男である。

「あっ、あっ、は、んんっ!」

あまりの快楽に逃げ腰になる体を、男が片腕を掴み、自分の方へ引き寄せているせいで、それも叶わない。

なまえは残った腕で、シーツを掴み必死に耐える。

「だん、ちょ…っ、も、苦し…!」

「そんな声で鳴いておいて何を言っているんだ」

懇願も無情な一言に一蹴され、更に律動が深くなる。

うつ伏せの体にのし掛からられると、なまえの体は大柄なエルヴィンの中にすっぽりと収まってしまう。

エルヴィンの匂いと、どちらのものかわからない汗と荒い息遣いだけの世界に閉じ込められ、快感が際立つ。

「なあなまえ、貴族の連中の下でもこんな風によがるのか?」

「そんなわけ…あう!ないでしょ…!」

胸に伸びた手が、膨らみをゆるゆると揉みしだく。
そのもどかしい刺激ですら、なまえの情欲を増長させた。

「あいつらはどんな風にお前を抱くんだ?」

耳元で囁かれ、意思に反して男を締め付けてしまう。

なまえは声なく笑われた気がした。

「あ、はあ、うう、ああん」

「今まで何人の男と寝た」

エルヴィンは立て続けに質問を繰り返し、なまえは掠れた声で、かろうじて答える。

「貴方が、いちばん、知ってるでしょっ…!」

「…そうだったな」

調査兵団の裏の顔の為に抱かれろと命令されたのは、いつだったか。

なまえは朦朧とした意識の中で考えていた。

上司の命令に逆らえる筈も無かった。いや、本当にそうだろうか。

「しかし… 君が不特定多数の男に抱かれて悦ぶような淫乱だとは思わなかったよ」

「ちがあ…っ!!」

「何が、違うんだ」

「はうう!っ、ん」

ぬるぬると浅い場所を擦られなまえは甘い悲鳴をあげる。

「言ってみろ、何故好きでもない男に敷かれて喘ぐ」

「っぐっ!」

エルヴィンは指でなまえの口をこじ開け、口内を掻き乱す。

だらしなく開いた唇の端から、唾液が顎を伝う。

苦しさに顔を歪める表情ですら、エルヴィンには扇情に映った。

休むことなく打ち付けられる熱に、なまえの体は苦痛も相俟って勝手に反応する。

「は、千切られそうだ…っ」

「ふあ、ああん、」

「ほら、なまえ」

促されるように指が引き抜かれる。

「誰でもじゃ、なっ…」

「ほう」

「……っ、……ふ、」

それきり声を抑え黙したなまえを見兼ねて、エルヴィンは甘く痺れてふやけていく部分と対照的に、固くなったそこに触れた。

「っひゃんっ!!」

途端になまえは声を上げて悶え始める。エルヴィンは構わず蕾を捏ねた。

「あう、も、そこ、は、やめてぇ…」

「なまえ、言いなさい」

「ふぇ…くぅ、それはっ、は」

なまえは息も絶え絶えに、悲鳴混じりに訴える。

「貴方に、体が、慣れたからあっ…!」

貴族や議員に抱かれる以上に、上司に教えこまれているのだ。

もともとろくに異性と交際した経験も無く兵士になり、組み敷かれれば尚更だった。

それを分かっていて問い質すなど、なんて意地悪なのだとなまえは泣きたくなった。

「……君は私をつけあがらせる天才だな」

「え?っひ、あ、あう!んぅ!」

涙目のなまえに、理性の箍の外れたエルヴィンは、欲のままに腰を押し付けた。

「やあ、ああ、ふああ!」

「っ、なまえ」

なまえを抱え込み、その首筋に顔を埋める。

「ふ、あっー!!」

「は、っ、」

この男からは逃げられない。
そんな言葉が頭に浮かぶ。
なまえは胎内に吐き出されるものを感じながら意識を手放した。

閉じた瞼から漏れる雫がシーツに染み込み色を変える。

エルヴィンは行為中掴んでいたなまえの腕を眺めた。

汗ばんでいる腕は、ゆっくり解くと、掴んでいた部分に指の痕が紅く浮き出ている。

なまえが自分に慣れていると啼いた時、どうしようもない支配欲が沸き起こるのを感じた。

くっきり残る圧迫痕に触れながら、彼女を手放すのはまだしばらく先の話になるだろうと思えた。









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