出会った時から気になっていたのだが、聞きそびれたことがある。だが、送還するだのしないだの、あの話をした時に彼女が涙を流したのを見て、なんだか聞いてはいけない気がしてきた。彼女、召喚獣にも心はあるのだから。

トン、トンと部屋の扉が叩かれた。恐らくは義父さんか。


「どうぞ」


ベッドに腰かけていたルカは、そこに控えめな視線を送った。


「……ネスティ・バスクさん、次の任務の話でラウル様がお呼びです」

「了解した」


呼びに来たのはあまり見知った顔ではなかったが、確か僕の次に召喚士になる試験を受けていた気がする。彼は僕が了承したのを見た後、何故か後ろを凝視し始めた。この部屋に何かめぼしい物でもあったか、と彼の視線を追った先にはルカがいた。


「……君はここにいてくれ」


ルカを見続ける彼を無視して、僕はルカに向けてそう言った。彼女はコクン、と頷くだけだった。



部屋を出て歩いていたら、先程の彼が小走りで追ってきた。まだ何か?と問えば、そいつは楽しそうな顔をこちらに向けた。


「あの子、最初は可愛いから見てたんですけど、なんか“アルネの森物語”のシュバルツの巻の呪われた女の子に似てませんか?」

「アルネの森……」

「そうそう、フードからちらっと見えましたが金髪でしょ?さらに紅い瞳で、紅いローブを身にまとってる感じとか!」

「なるほど……まあ、偶然だろうな」

「まあ、そうですよね……それでは」


僕は、義父さんの話を聞いたら図書館に行くことにした。呪いという単語がつくことから容姿まで、彼女が似ていることが偶然なわけがない。


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