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紅のローブがひらりと舞い、フードを被った少女がこちらを向いた。フードからちらりと覗く彼女の瞳は、紅い。
「ひとつ聞くわ。この場にあなたの味方はいるの?」
凛とした声で問われ、僕は慌てて首を横に振った。
「いや、僕だけ……と、君だ」
「了解」
言うが早いか、紅が舞った。彼女はいつの間にか両手に斧を持っていて、僕を刺した子供に向かって走っていた。走る、と言っても彼女は浮かんでいて、足は動いているものの、ほとんど滑空しているようなものだが。
当然のことながら相手の子供は全く動けない。よく見ると、腰を抜かしてしゃがみ込んでいる。だが彼女はそんなことを気にも留めていないようで、そのまま突っ込み、斧を振りかざした。これでは、あの子供はあっさりと死んでしまうだろう。
「まずは一人目……」
「ウワァァァァ!」
子供は目を閉じて叫んだ。怖いならば最初から戦わなければいいものを。それでも、この盗賊たちは役人に引き渡さなければならないから、殺してもらうわけにはいかなかった。
「おい、その子供を殺すな!」
「大丈夫よ」
言いながら、彼女は振り下ろそうとしていた両手の斧の柄で子供の腹を殴り、気絶させた。
「次……」
子供はガクリと倒れたがしかしそれを特に気にもせず、彼女は子供が飛び出してきた草むらに向かう。まさか、敵がまだいるのだろうか。
「かくれんぼが下手ね」
彼女が斧を一閃すると、そこにあった草たちがあっという間に切り取られた。そこからまたもや新しい敵が3人、姿を現す。今の今まで僕は全く気がつかなかった。我ながら不甲斐ない。
居場所がばれた盗賊たちは、途端に戦闘態勢へと切り替わった。構え方から何から、先ほどの敵よりも強いことが容易に想像できる。
「よくもオレたちの仲間をやってくれたな!」
「……」
3人の敵を前に、彼女は斧を構える。3対1と、彼女には不利な状況だ。それでも、彼女は大して気にした様子はない。
「おい、相手は3人もいるが君は大丈夫なのか?なんなら僕が1人だけでも相手を……」
「いいから怪我人は休んでて。こんな素人、何人でも同じだもの。言ったでしょ、助けてあげるって」
「わかった……」
相手の盗賊たちは、醜く笑いながら彼女を見た。
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