瞳に映る愛慕

D軍TF主


布を被り、雛に餌をやっているメガトロン様の前に跪くなまえを、サウンドウェーブは後方から見つめた。顔を上げろという声にそっと起こした顔は、久しぶりに閣下に会えた喜びと体の具合の心配とがないまぜになっている。


「お久し振りでございます、閣下。お加減は如何ですか」
「相も変わらずだ」
「…申し訳ございません。私の力が足りないばかりに…」
「…構わん。貴様がよくやっているのは知っている。ところで、あの計画はどうなっている」
「はい、恙無く」
「ならいい」


敬愛する主君に再び首を垂れるなまえを見て、サウンドウェーブは何とも言えない焦燥感に苛まれた。メガトロン様を見詰めるその瞳には心からの敬愛や憧憬や労りがこもっている。


「もうしばらくはサウンドウェーブとの行動を続けろ」
「畏まりました」


メガトロン様の鋭い指が、なまえのヘッドパーツをそっと滑るのを見て、視線を逸らした。







帰路、サウンドウェーブは前を行くなまえを呼び止めた。心なしか不思議そうにしている彼女に問いかける。


「閣下が好きか」
「?当たり前でしょう、サウンドウェーブ。そういう貴方だって同じじゃない」
「…そうだが、いや、違う」
「?」


どういうことだ、と人間で言うなら眉をひそめるような仕草を見せたなまえの腕に、すっとケーブルを巻き付ける。途端、彼女はハッとした顔をした。


「何を」


戸惑う彼女の腕にそれを強く巻き付けると、ぎちりと嫌な音がした。


「……痛いわ」
「…このまま縛りつけたら、お前は俺を見るだろうか」
「…狂ったのですか、サウンドウェーブ」
「狂った、か。ある意味当たってはいる」


意味を計りかねているのだろう。彼女は何も言わない。

俺の姿だけが映っている彼女の瞳を覗きこんだ。
敬愛も憧憬も労りも、別にいらない。
俺が欲しいのはそんなものではないから。


ぽつりと、言葉が転がり出た。



「…欺瞞の民が「愛している」などと言ったら、お前は笑うか?」



その言葉を聞いた彼女は暫く固まって意味を反芻していたが、しばらくしてどうやら理解したらしい。途端に彼女の機体の熱が上がっていくのを、センサーが感知した。


「あ、愛…サウンドウェーブ、貴方やはりどこか回路が可笑しくなったのじゃ…!」
「違う、本心だ。…俺はお前に狂っている」
「、な、何…」


動揺して身を引こうとするなまえを逆に強く引き寄せた。


「俺を見ろ」
「あ、」


引き寄せたなまえの瞳に己が映るよう、被さるように見下ろした。


「閣下への想いはそのままでいい。だが今日からは俺も想え」

―ただし、俺が欲しいのは愛慕だが。




そこまで言うと、サウンドウェーブは不敵に笑ってケーブルと体を離した。


「行くぞ」


暫し呆然としていたなまえは、それを聞いてハッと硬直を解いた。機体の熱はただの一時的な不調から来るものなだけだ、と言い聞かせながら。

―それでも、サウンドウェーブのバイザーの奥の、熱を帯びた光は暫く忘れられそうにない。








―――
せ、切甘…?若干ヤンデレチックな音波。
音波は病んでるくらいが丁度いい気がした結果、こんな産物が出来上がりました(・ω・`)
ハッピーエンドには仕上げられず、中途半端になってしまいましたがお許しください。


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