甘やかされてます

ここ、ネメシスとかいう戦艦に連れてこられてどれくらい経っただろう。なんかよくわからないが、いつものように通勤していたら、いきなり目の前に来た車が変形してロボットになったのだ。そして「来い」と有無を言わさず捕まり、キャトられた。

で、着いたそこには恐ろしくでかいロボットがいっぱいいるし、親玉に「貴様はダークエネルゴンのパワーを秘めているからここにいろ」的なことを言われるし。
ちなみに親玉はメガトロンというらしい。この前渋格好よくてわりと好きですと言ったら、大笑いされた。部下の人たちが動揺しまくっていたのが笑えたが、まあそれはまた別の機会にでも。

しかしまあ、なんだかんだで楽しく過ごしている。ナルシストな軍医や脳筋ぽいけどそうでもない助手や無口な参謀や、あとムカつくが情けない航空参謀とか、どのトランスフォーマーも面白いし。

が、どうもここに来てそろそろ家が恋しくなってきた。いや、本気で恋しい。
耐えきれない思いを目の前でなにやら作業しているブレークダウンに打ち明けた。


「ねえねえブレさん。私おうちに帰りたい…お布団に寝たいんです心の底から」
「何言ってんだてめえは。ダメに決まってんだろ」
「えええ、ケチケチしないで出してよブレさん!ちょっとだけ!布団が私を待ってるの!わが恋人が!」
「布団が恋人って寂しいやつだな」
「うぐうっ…!」


憐れんだ目で見られてしまった。なんだよ、こんな展開予期してなかったよ。
思わぬところからのナイフで胸が痛い。と、そこにノックアウトが話に加わりだした。


「なんだなまえ。ホームシックか?」
「うーん…まあ…っていうか、そろそろこの金属板の上で寝るのが辛いんですよ。首とか肩とか腰とかもうバキバキで」
「へえ、バキバキ…」
「あ、解体的な意味では無いんでそこに反応しないで下さい」
「ノックアウト落ち着け」


目を輝かせて工具を取り出そうとしたノックアウトをブレークダウンが押さえる。
ありがとうブレさん。


「ううむ…こうなったらメガトロン様に直談判しかないな…」
「は!?」
「まあそれがいいんじゃないか?私が連れてってやるよ」
「あ、じゃあお願いします」


連れてってくれるらしいノックアウトの差し出した掌に飛び乗る。隣でブレークダウンが何か言いたそうにしていたが、結局すごく深いため息をついて「好きにしろ」と言われた。何なんだ。ため息ついたら幸せ逃げるよ。






「と、いうわけでおうちに帰りたいんですが」
「何言ってるんだ虫ケラ!!却下だ却下!」
「スタスクには聞いてないでしょ。あと虫ケラじゃなくてなまえです」
「うるさい誰がスタスクだっ!この……!」
「やめんか愚か者が」
「ぐふっ」


相も変わらずヒステリックに怒鳴ってその鋭い爪を振りかざしたスタースクリームの頭を、メガトロンががっしり掴んで黙らせる。
さすがメガトロン様。


「つまり貴様は寝場所に不満があるのか」
「…うーんまあ、そういうことになりますかね?」
「なら、帰らんでもここにその『布団』とやらを持ってこれば良いのだろう」
「えっ」
「サウンドウェーブ」
『了解』
「えっ」


予想外の展開にぽかんとしていると、メガトロンは非常に悪そうな顔で笑みを浮かべながら私をつかみ上げた。



「貴様は俺様にとって必要なんでな。そう簡単に放しはせんぞ」
「……は、はい…」


最初に会った時もそうだった。
メガトロンの言葉を聞いて、目を見てしまったら、おもわず頷いてしまう。…きっとこれがカリスマというものなんだろう。
にしても、サウンドウェーブさんに持ってこさせるとか申し訳なさすぎる……。






何はともあれ、サウンドウェーブはどうやったのか知らないが、ちゃんと私の布団を持ってきてくれた。


「ごめんね、サウンドウェーブさん。まさかサウンドウェーブさんが持ってきてくれることになるとは思いもしてなくて…」


申し訳なさでいっぱいの私をじっと見つめて、サウンドウェーブはゆっくり顔を横に振った。その細長い指で頭にちょんと触れると、くるりと踵を返して部屋を出ていくその後ろ姿に思う。



この人たちマジで悪の軍団なんだろうか。と。






答え:貴女が甘やかされてるだけですよ。






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蜘蛛姐さんとドレッドウィングはまだいない頃ということで。


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