全ては貴方に

「どこに行っていた」


帰ってきたなまえは静かな怒りを身にまとうメガトロンを見て、びくりと固まった。その怒気をまともに受けて竦んでしまった身は、言葉を発せない。


「…どうした、答えろ」


すうっと目を細めて近寄ったメガトロンがなまえを見下ろす。返事を促す言葉に、なまえは恐る恐る口を開いた。


「…あ、す、スタースクリームと」



スタースクリームと偵察に行っていました。

しかし、その言葉を言い終わる前に、なまえの体に衝撃が走った。


「かはっ、!」


首を強い力で絞められ、目の前がチカチカと瞬く。装甲の破損する音が聞こえた。というよりも、メガトロンの鋭い指先が食い込み、意図的に引き剥がされている。


「誰がいつあの愚か者と二人になっていいと許した。ん?」
「…っあ、」
「…許したか?俺様は」


必死に首を横に振る仕草を見せると、ぱっと手を離される。受け身を取る間もなくなまえは床に落ちた。首もとに手をやると、装甲が一部壊されケーブルが剥き出しになっていた。


「メ、メガトロン様…」


地に崩れ落ちたなまえをメガトロンは燃え盛る瞳で一瞥すると、片腕を引っ張り立ち上がらせた。掴むその手の力は恐ろしく強い。みしり、と嫌な音がした。
いまだぼやける視界でなまえはメガトロンを力無く見上げる。そんな彼女を、メガトロンはぐいっと引き寄せると、その頸部の剥き出しになったケーブルに噛みついた。



「ひっ、…ああああ!!」



ばちばちと火花が飛び散るのも物ともせず噛みつかれ、なまえは痛みで悲鳴を上げる。



「いた、あ…っも、もうお許しくださいメガトロン様…!」
「何をだ」
「も、もうスタースクリームと…っ二人で、偵察には行きません…!ひ、ぐっ」
「…その言葉、本当だろうな」


必死で、はい、絶対にもう行きません、約束は守ります、と途切れ途切れに言葉を紡ぐ。それでもメガトロンは掴む腕の力も、噛みつく力も緩めない。

お願いします…と再び懇願すると、ようやくメガトロンは顔を離し、なまえの顔を正面から覗きこんだ。


「そうか」
「はい、はい、必ず…」


焦点の定まらない目でそれでも必死に目を合わせて言おうとするなまえに、メガトロンは一度満足げに笑った。


「ならいい」
「あ、ありがとう、ございま…っ!?」
「…だが、仕置きは必要だ」
「ああああああっ!!!」


メガトロンの顔が消えた。
と思うと、先ほどよりも一層強い痛みに襲われ、なまえはそのまま意識を飛ばした。











頸部を優しくなぞる感覚に、浮遊していた意識が戻ってくる。ゆっくり目を開けると、そこには穏やかな顔のメガトロンがいた。


「起きたか」
「…メガトロン様」


かすれる声でその名を呼ぶと、メガトロンは掌の位置を上げ、彼女の顔の輪郭を撫で始めた。意識を飛ばす前とは正反対の手つきに、なまえはぶるりと震える。

―この人の愛は、恐ろしい。

そっと手を持ち上げて首に触れると、そこはもうすでに綺麗に修復されていた。


「良いか、これからは俺様の許しを得ずあやつと二人きりになるな。他の奴らも同様だ」
「…はい、必ず。必ず守ります」
「いい子だ」


そして、優しく口づけを落としてくれるメガトロン。その口づけを甘んじて受けとめながら、なまえは思った。


それでも、私はこの方から離れたくないのだと。



「……お慕いしています、メガトロン様。貴方様以外には誰も」



囁かれた言葉に、メガトロンは喉の奥で笑うと、今度は先ほど噛みついていたなまえのそこに口づけを落としたのだった。










―――
首のケーブルってなんかエロいなーと思っていたら出来た産物。
大帝がちょっぴりヤンデレでごめんなさい。


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