会いたくなったら言えばいい
かちかちと携帯を弄っていると、突如メールの着信を知らせる音がした。
この着信音は、彼だ。
開いたメールは、案の定彼―サウンドウェーブからのものだった。
【元気か?】
簡素な一文におもわず笑みが零れた。ぽちり、とキーを押して言葉をつづる。
【元気だよ。サウンドウェーブは?】
【元気だ。今何をしていた?】
今…。
言葉を書いてから、なまえは送るのを少しためらった。
その分が言外に、「会いたい」とか「寂しい」とかせかしているような気がして。
こんなことを送ったら、彼は困るだろうか。鬱陶しいと思うだろうか。
【…サウンドウェーブからのメールを待ってたって言ったら、困る?】
結局、悩んだ末にその文面を送ってしまった。
もともと、メールはあまり得意ではない。顔が見えない分、言葉にすごく気を使わないといけないから。
なんとなしに書いた言葉が、違って捉えられることもある。
返事は来ない。
ああ、やっぱり違うことを書いてれば良かった…。
シーツに顔をうずめて、自己嫌悪に陥る。いつもなら、たとえ遅くても5分以内に帰ってくる返信が無いのだから、今日はもう来ないんだ。うん、きっとそう。
考えるのが嫌になったので、もう眠ることにした。眠りにつく前に、「ごめんね、冗談だよ」とメールを送るのを忘れずに。
*
こつん、と何かがあたる音にふと目を覚ました。時計を確認すると午前2時くらい。
気のせいかと思いシーツに顔をうずめると、再び音がした。窓の方からだ。
目をすりながら窓辺に近づき、カーテンを開ける。
と、いきなり何かが体に巻き付いた。
ご丁寧に悲鳴をあげそうになった口にも巻き付いている。そのまま宙を浮く感覚がして、窓から外に体を持ち上げられた。
そこにいたのは、サウンドウェーブだった。
じたばたしていた腕がぴたりと止まるのを確認して、口元を覆っていたケーブルが離れていく。
「さ、サウンドウェーブ…?」
『こんばんは』
「え、え…こんばんは。あ、あの何でここに?」
すっかり目が覚めてしまった。どうしてサウンドウェーブがここにいるんだろう。思った疑問を口に出すと、すぐさま返事が返ってきた。
『メール』
「え、メール?」
こくりと頷いて、サウンドウェーブはもう一度音を発した。
『会いたくなった』
途端に、色々込み上げてきた。
もしかしてメールを見て気を使ってくれたのだろうかとか、私も会いたかったとか。申し訳なさと嬉しさとがごちゃごちゃになって、ぽろりと涙が零れる。ごめんねと囁くと、するりと髪を掬われた。何のことだ、と言外に言われた気がして、見て見ぬふりが上手いんだから、と笑みがこぼれた。
「…私も、会いたかったよ」
ゆっくり言葉を紡ぐと、こくりと頷き返された。そのままぐいっと顔を近づけられる。息がかかるくらいの距離で顔に手を置いた。
「来てくれてありがとう」
ちゅ、とキスをして頬を押し当てると、お返しというようにケーブルを口に優しく押し当てられた。
【会えて良かった】
彼が帰った後、携帯を見るとサウンドウェーブからメッセージが入っていた。消えないようにしっかり保護をかけて、携帯を胸で抱きしめる。
「ありがとう。…私も」
少ない言葉だけれど、そんな貴方の言葉に私はいつも救われている。
―――
甘くなってますか…?P音波さんはしゃべれないから難しいですね(´・ω・`)
携帯文章と口調が違うのは仕様です、一応。