会いたくなったら言えばいい

かちかちと携帯を弄っていると、突如メールの着信を知らせる音がした。
この着信音は、彼だ。
開いたメールは、案の定彼―サウンドウェーブからのものだった。


【元気か?】


簡素な一文におもわず笑みが零れた。ぽちり、とキーを押して言葉をつづる。


【元気だよ。サウンドウェーブは?】
【元気だ。今何をしていた?】



今…。


言葉を書いてから、なまえは送るのを少しためらった。
その分が言外に、「会いたい」とか「寂しい」とかせかしているような気がして。

こんなことを送ったら、彼は困るだろうか。鬱陶しいと思うだろうか。




【…サウンドウェーブからのメールを待ってたって言ったら、困る?】


結局、悩んだ末にその文面を送ってしまった。

もともと、メールはあまり得意ではない。顔が見えない分、言葉にすごく気を使わないといけないから。
なんとなしに書いた言葉が、違って捉えられることもある。


返事は来ない。

ああ、やっぱり違うことを書いてれば良かった…。


シーツに顔をうずめて、自己嫌悪に陥る。いつもなら、たとえ遅くても5分以内に帰ってくる返信が無いのだから、今日はもう来ないんだ。うん、きっとそう。
考えるのが嫌になったので、もう眠ることにした。眠りにつく前に、「ごめんね、冗談だよ」とメールを送るのを忘れずに。







こつん、と何かがあたる音にふと目を覚ました。時計を確認すると午前2時くらい。
気のせいかと思いシーツに顔をうずめると、再び音がした。窓の方からだ。

目をすりながら窓辺に近づき、カーテンを開ける。


と、いきなり何かが体に巻き付いた。

ご丁寧に悲鳴をあげそうになった口にも巻き付いている。そのまま宙を浮く感覚がして、窓から外に体を持ち上げられた。



そこにいたのは、サウンドウェーブだった。
じたばたしていた腕がぴたりと止まるのを確認して、口元を覆っていたケーブルが離れていく。


「さ、サウンドウェーブ…?」
『こんばんは』
「え、え…こんばんは。あ、あの何でここに?」


すっかり目が覚めてしまった。どうしてサウンドウェーブがここにいるんだろう。思った疑問を口に出すと、すぐさま返事が返ってきた。


『メール』
「え、メール?」


こくりと頷いて、サウンドウェーブはもう一度音を発した。



『会いたくなった』



途端に、色々込み上げてきた。
もしかしてメールを見て気を使ってくれたのだろうかとか、私も会いたかったとか。申し訳なさと嬉しさとがごちゃごちゃになって、ぽろりと涙が零れる。ごめんねと囁くと、するりと髪を掬われた。何のことだ、と言外に言われた気がして、見て見ぬふりが上手いんだから、と笑みがこぼれた。


「…私も、会いたかったよ」


ゆっくり言葉を紡ぐと、こくりと頷き返された。そのままぐいっと顔を近づけられる。息がかかるくらいの距離で顔に手を置いた。


「来てくれてありがとう」


ちゅ、とキスをして頬を押し当てると、お返しというようにケーブルを口に優しく押し当てられた。





【会えて良かった】


彼が帰った後、携帯を見るとサウンドウェーブからメッセージが入っていた。消えないようにしっかり保護をかけて、携帯を胸で抱きしめる。


「ありがとう。…私も」


少ない言葉だけれど、そんな貴方の言葉に私はいつも救われている。






―――
甘くなってますか…?P音波さんはしゃべれないから難しいですね(´・ω・`)
携帯文章と口調が違うのは仕様です、一応。


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