言葉なんて必要ない。必要があるとすれば、それはきっと小さな根性。






「おぅ、おまえら、待たせたな!!」

大きな音を立ててドアを開けた一樹生徒会長に続いて生徒会室に入る。
奥行きのある部屋で、なんとお茶をたてる茶の間までついていた。
・・・な、なんなんだ、この部屋。というか、ここは校内?
興味津々で、私は一人、生徒会室をふらふらした。


「――おい、万里!おまえは副会長をやってくれるだろう!?」
「ふぇい!?」


床の間に飾ってあった桜を見てボーっとしていた私に声がかかる。
声のした方に顔をむければ、一樹生徒会長が赤い椅子に座って私を手招きしていた。
ローファーを履いて立ち上がり、彼の元へ向かう。
一樹生徒会長の前にはつーちゃんと男の子が一人、立っていた。

さっき、生徒会室の前で視た世界の中で、一樹生徒会長とつーちゃん、
私と一緒に笑っていた男の子。
だけど今は、とても困った顔をしている。
男の子は私を視界に入れると、さらに眉を寄せた。

「会長、彼女は‘特科生’です。僕らよりも授業に追われ、忙しいでしょう。
・・・そんな彼女に仕事をさせるのですか?」
そうです!つーちゃんも男の子に口をそろえた。
私は首をかしげる。

「どうして貴方のものさしで私をはかるの?」
男の子はもともと大きな目をさらに大きく開き、私を見てきた。

「私はこの学園でいろんなことを学びたいと思ったから特科生’になったの。
でも、勉強のためだけにこの学園に来たわけじゃない。
・・・頭だけではなく、心や体でいろんなことを知りたいの」

私はまだまだ小さく幼い。世界の中での私の存在なんて、小さすぎてわからないぐらいだろう。
・・・そんなんじゃだめなんだ。もっと大きくなりたい。もっと私の存在を濃くしたい。


私の生きる意味を増やしたい。


「確かに勉強と生徒会の両立は難しいかもしれないね」
私の言葉につーちゃんは、やっぱりって顔をした。
うん、そうだよね。たぶん、大変だ。・・・だけどさ、つーちゃん。
私はつーちゃんと男の子に笑顔で言った。

「だけどさ。きっと、すごく楽しいよ。
ただ勉強するだけの三年間より、疲れるぐらい毎日走り回ってる三年間のほうがさ。
誰かに必要とされ、誰かを必要とする日々はきっと、一日一日を綺麗に感じるよ」

男の子の表情がどこか固まった。つーちゃんも驚いたようで口をあけている。
対して、今まで黙っていた一樹生徒会長は嬉しそうに笑った。

「あぁ、きっと毎日が宝石みたいに輝くようになるさ。
日々、色濃く生きてればな。
・・・なぁ」



すっと変わった表情はすでに星月学園生徒会長のもの。
彼は私たち三人に懇願した。

「おまえたちはこの星月学園を支えていくことのできる人間だ。
・・・俺と一緒に」

この場所を守っていってくれないか



私は何も言わずに、ただ笑顔で大きくうなずいた。











道が今、大きく広がった
(一日がとても重くなる)



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