*ピウ・モッソは女のひとらしい

『あと少しだけ早く』
私の心の内から声があがる。そんなことは分かっている、けれど、けれどどうしても足が空回りして前に進んでくれない。何度やってもダメなのだ。その間に、彼はどんどん遠ざかっていってしまう。声は出ない。引き攣れた喉をどんなに絞っても、呻き声のひとつすら出る気配は無くて、涙だけは幾らでも流れるのに。どうか、『あと少しだけ早く』。この足が動いてくれたら。この喉から声が出たのなら。彼を引き止めることが出来たのだろうか。

( 0909 )
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