*或る鴉の話

この夜が明けない事は無い。

鴉は夜明けの空に舞い、疲れなど知らぬ顔でまだ観ぬ君を探している。嘴で切り裂いた風が頬を掠め、仲間が落ちて、その胸が染まっても、翼を止める事を鴉は知らない。
つまり有り体に言えば鴉は不器用なのだが、けれどもその彼を真っ直ぐで好ましいと別な鴉は噂し、また別な鴉は阿呆で救いようが無いと笑う。

鴉は翼を止める術を知らない訳ではない。ただ、この場所が翼を休める場所ではないという事は、鴉は知っている。

( 0906 )
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