*ジョシュと4主会話
*4のラストミッション
*バッドあるいはハッピー
▽Laugh@Endless
しろくしんでゆく
「何でだ、大将」
「"なんで"、だって?――それは、君も良く分かっている筈だよ。…なあ、レイヴン」
あまりに静かな声だった。
こいつは、こんな状況でもこいつのままで居られるのだなとぼんやり考えて、いっそアナトリアがどうのとか諸々の事は頭からいっぺんに消えてしまっていた。
「わかるわけ無いだろうが。なあ、どうして、」
問い掛けようとする俺の声を遮るように、ノイズだらけの回線から笑いが零れたような気がした。きっとそんなのは気のせいだろうが。
ガリガリと不愉快な音を吐き出しながら彼が嘯く。囁く。
「いや、わかる―はず――、…君は、私と――なんだから、な…―――」
ぐっ、と何かが潰れた様な音がした。
瞬きの後、がくん、と、恐ろしく巨大なプロトタイプが傾いだ。
息をするうち、じりじりと、ケミカルグリーンの濃度が増してゆくのがわかる。
「ジョシュ、あんたは…、」
言葉を飲み込む。
そうだ、本当はわかっているんだ。
彼と同じ立場になったら、俺だってどうだかわからない。
わからない。
けれども、そうだ、解りたくなど、無いんだ。そんな事は、ただただ恐ろしかった。
"それ"を遮断する。
ケミカルグリーンの粒子が舞う。
彼らばかりは何にも等しい。
勝者にも敗者にも、生き死に関係無く、蝕み、侵し、噛み砕く、……
大地が、山猫が、鴉が、しんでゆく。
埋もれる。しんでゆく。
「なあ、あんたの守りたいものはどうなったんだ、今度聞かせてくれないか――直ぐに、俺も行くからさ、」
アナトリアは、きっともう駄目だろうなだとか、フィオナの奴は大丈夫かなだとか、これからの事だとかを。
けれどもきっと、そんな事ももうどうだって構わない。
疾うに半分以上潰えた視界が更に滲む。疾うに失った味が舌の上に広がってゆく。どちらとも同じ色をしている。ああ、これは、白に染みる赤だ。俺の最も身近にあったものだ。頭痛も何もあったものか。君をなくした傷に比べたら。こんなものは痛みのうちにすら入らない。首輪からフィードバックしたノイズが脊髄をつたって落ちていく。俺に溜まっていく。吐き出せない情報が積もる。ああ、君は最後の最後まで笑っていたのだろうな。なら、俺も笑っていよう。俺と、君の為に。
(きっと俺ももう直ぐそっちに行く。なあ、大将、あんたは、ただ立派だったように俺には思えるんだ――)
(了