突然だけど、僕はイチゴミルクがあまり好きじゃない。

小さい頃に一度だけ飲んだ事があるけれど、あの独特の甘ったるさと香りに思わず顔をしかめてしまった事を今でも覚えている(確かその後、父さんに"これあげる"って押し付けたっけ)

と、何故僕がこんな唐突な話を持ち出したのかというと、僕の隣にいる彼女――真名部瑞希さんが、そのイチゴミルクをとても美味しそうに飲んでいるからである。

「…よく飲めるね、それ」

思ったままの事を口にすれば、それが気に障ったのか彼女はプイッとそっぽを向いた
どうやら、言葉のチョイスを間違えてしまったらしい。

「皆帆君に、私の好みをどうこう言われたくありません」

「いや、別に真名部さんの味覚についてあれこれ言うつもりは無いよ。ただ君は僕と味の好みが合わないねってだけさ」

「…皆帆君って、いつも一言余計ですよね」

「そうかな?」

「そうです!」

彼女とのこういったやり取りは、僕達の日常の一つとしてすっかり定着していた。
似ているようで正反対な僕達だけど、いつの間にかお互いの隣にいる事が当たり前になっていて……それに気付いたのは、割と最近の事だ。







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