なにも言えなくて
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円堂監督が雷門にやって来た次の日、私と天馬くん、信助くん、葵ちゃんは、ミーティングルームで去年のホーリーロード決勝戦の映像を見ていた。
対戦校は木戸川清修。雷門が若干押され気味だが、それでも激しい攻防が続くとても熱い試合だ。
特にキャプテンは『神のタクト』で選手を導いたり、必殺技『フォルテシモ』で木戸川から一点を取ったりと大活躍している。
「すごいね! キャプテン大活躍じゃん!」
「でも、これもフィフスセクターの指示通りなんだよね…」
葵ちゃんの言葉で少しハッとなる。
そうだ、これもきっとフィフスセクターが出した勝敗指示に従った試合…先輩達も、台本通りに動いているに過ぎないんだ
「…俺、去年の決勝戦、すっごい真剣に見てたんだ」
「私も…」
最後までどっちが勝つか分からなくて、目が放せなくて……すごくワクワクしたのを今でも覚えている。
「どっちのチームも本気出してるように見えるけど……」
「当然よ、本気だもの」
部室に入って来た音無先生が、信助くんの疑問に答えた。
「本気の試合だからこそ、神童君も『神のタクト』を使ったし、『フォルテシモ』を打ったのよ」
モニターに視線を戻すと、悔しそうな――でもどこか清々しい表情をした先輩達が画面に映っていた。
音無先生はモニターの電源を落とし、椅子に腰かける。
「負ちゃったけど、あの試合はみんな充実していたと思う。フィフスセクターが管理する試合の中でも、時にはこういう全力を出せるものがあるのよ」
ホーリーロードのような大舞台でこうなったのは珍しいケースだけど、と先生は付け足す。
他校との練習試合の時も、勝敗指示が出る場合(この間の英都戦みたいな)もあれば、自由に出来る場合もあるらしい。
管理したりしなかったり……フィフスセクターってよく分かんないな。
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