オカズで通じる両想い
ガサゴソ、ガサゴソ
「おい」
「んー?」
「人の部屋荒らして…何探してやがる」
「エロ本」
今日もいきなりながら
塑琉奈が俺の部屋に遊びに来た
「お菓子はー?」なんて、
可愛くねだってきたもんだから
仕方なくお茶と煎餅を手に
部屋に戻ってきたらこれだ
「……煎餅持ってきたぞ…」
「あっ、はーい!!!!」
自分の部屋が荒らされているのに、テーブルにお茶と煎餅を置いて一声すれば、塑琉奈は一斉に作業をやめて煎餅に手をつける
俺はそれを気にくわない顔で見つめた
「で、なんでエロ本なんだよ」
「そうそう!俺思ったんだよね!」
「…なにが?」
食べ粕を頬に付けたままの塑琉奈が声をあげたのに、その食べ粕を取ってやりながら俺は応対する
「キョウヤ!ちゃんと抜いてる!?」
「……は?」
「だーかーら、ちゃんとオナニーしてるか!!!!」
次に出てきた塑琉奈の言葉に
一瞬思考がシャットアウト
再確認で何とか思考回復させて聞き返せば、今度はストレートに返されて俺は頭を抱えた
「お前…本当に女かよ…」
「体はな!!!」
げんなりな俺とは逆に、ニヒヒッと歯を見せ笑いながら塑琉奈は一欠片の煎餅を噛み砕いた
「で、どうなの?
ちゃんとしてるの!?」
「誰が教えるかアホ」
「えー!いいじゃん、教えろし!」
ズイッと勢いよく顔を近づかせ、期待の眼差しを俺に向ける塑琉奈に俺はアホらしいと顔をしかめた
大体、教えて何になるんだか…。まあそれ聞いたら絶対「なんとなく」って返すのは目に見えてるがな
それに…塑琉奈をオカズにしてるなんて言えない…。言えるわけないだろ…!!!
「むむ…じゃあこうしよう!
俺も秘密とか言うから教えてよ!」
「勝手に等価交換にすんじゃねぇよ」
「俺、キョウヤが好きだよ」
「えっ」
勝手に話を進めてばかりの塑琉奈に俺は悪態を付こうとすると、間髪入れずに言った塑琉奈の言葉に俺は悪態ではなく、呆気に取られた
「はい!俺言ったから次キョウヤー!」
「…待て待て。
さっきのどういうことだ?」
「何がー?」
「惚けんな。」
落ち着け。落ち着くんだ俺。
いきなり言ってきたからあまり状況が把握出来なくなってきたぞ。
当の本人はヘラヘラ笑って俺の反応が楽しいのかその笑みは下品極まりない。
まあ…コイツの反応見る限り、あれか…
「それは友達として、だよな?」
「ううん!俺、オカズにしてるほどキョウヤ好きだよ!」
「!!?!」
訳が判んなくなったじゃねーか!!!!
どういうことだよオカズって!
どれくらい好きなのかもわかんねぇよ!
おい待て…!!ここまで来たら
塑琉奈もしかして…男…!?
「女の子もマスターベーションするんだよ」
混乱ばかりで頭を抱える俺を見て、予想通り、と言わんばかりの不敵な笑みを浮かべ、塑琉奈はそう言い放つと、バリッと煎餅を頬張る
俺はその言葉にやっと脳内がハッキリと出来た
「つまり…あれか?
俺に抱かれてぇくらい好きってことか?」
「さっきからそう言ってるじゃんか。何度も言わせないでよ恥ずかしい」
「回りくどいっての…」
「結構直球だったと思うんだけど」
「…うるせぇ」
ハーッと深くため息をついて、もう一回気持ち落ち着かせてから塑琉奈に向き合えば、全く変わらず、また頬に煎餅の食べかす付けながらニカッと笑う
「はい!次はキョーヤの番!」
畜生、余裕ありありな顔しやがって。
誰もあんなこと直球で言うやついねぇっての…
…ま、けど次はお前が混乱する番だぜ?
「俺も、お前をオカズにしてるほど好きだぜ?」
オカズで通じる両想い
(ロマンもムードもあったもんじゃねぇ…)
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