妄想溺愛
「…………」
「…………」
俺と塑琉奈は今、2人で向かい合っている。
というか塑琉奈がずっと見てた視線に気付き、俺がそれに合わせて尚も無言が続いている
「……うひっ」
「なんだよ…」
「なんでもないよ…うひひひ」
やっと沈黙が破れたと思えば、塑琉奈から出たのは変な笑い声。訳判らずに見つめたまま眉をひそめても、塑琉奈はにやついた顔のまま。
「いやー…にやけちゃうわー」
「意味判らねぇ…」
流石ににやついたままの塑琉奈がいい加減気持ち悪いので、俺は視線を外し、ため息をついた。
「ごめん、キョウヤ目の前にしてキョウヤの妄想してたわ」
ニヤついている理由を塑琉奈の口から聞いて、俺はまた塑琉奈を見つめた
「目の前にいるんだから俺の妄想しなくていーだろ…」
「だってキョウヤカッコいいから」
「あのな…」
サラリと言ってしまうこいつに俺は心底弱いと思う
…。現に今のを聞いて正直顔が熱くなってる気がする。逆に俺が恥ずかしいぞ
「理由になってねーよ」
「理由は必要ない!好きだから妄想するのさ!」
「…そうかよ、じゃあ…」
「む?」
俺はなんとか恥ずかしさから持ち直し、楽しそうに笑う塑琉奈の手を引いて、胸元へ手繰り寄せる
「その妄想、俺に聞かせろよ」
俺が実現させてやるからよ
妄想溺愛
妄想する程君を愛してる
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