盾神短編 | ナノ


恋の味

「……」


キョウヤは少し考えながらも、
カゴにバサバサと色んな饅頭を入れてゆく



「(クリームとチョコと苺…抹茶、胡麻、プリン…)」



カゴに入れた
饅頭の種類を数えながら、
キョウヤは少し楽しそうに
レジに向かった



「(あいつ…喜ぶかな…)」








流氷がバイト帰りから
直接学校に来るのは
事前に調査済み

だから俺は今日珍しく
大きめの紙袋を片手に
早く学校に向かった


べっ、別に
担任に聞いたわけじゃねぇ!!

偶然知ったんだからな!?





ガラッ



「……」



まだ電気の点いてなく
午後の光が窓から差しかかる

壁時計をみやれば、四時半手前



あともうちょっと…



俺はウズウズと
もどかしい気持ちなまま
自分の机に座ることにした



「………」ウズウズウズウズ



気が付けば貧乏ゆすりが
止まらない俺の足



ガラッ



「ふぃー…」

「っ!」ビクゥ!!




ふとドアが開いて
流氷が入ってきた

俺はそれに
貧乏ゆすり以上に
体をビクつかせた



「ありゃ珍しいね?おはよー」

「おおおっ…、おう…」



さほど気にせず
俺に笑い掛ける流氷に

俺はドギマギしながら返事をする



「ぬーぬん…ぬぬぬぬ…ぬー!!!!」



流氷は相変わらず
即興鼻歌を口ずさみながら
荷物整理をしていて

それを尻目に俺はチラリと
持ってきた大きめな紙袋を
目にやった





どうする…今渡すか?
いや早すぎだろ

じゃあ給食の時間にしか…
放課後はあいつ隙ねぇし…



「なあ!盾神!」




もんもんと
考え込んでいると
ふと上から聞こえる声

顔を上げてみれば

大きな箱を持って
俺を見つめる流氷の姿



「マカロン、食べる?」

「マカロン?」



ニコニコっと流氷はそう言い
持っていた箱を開き、俺に見せる

そこには色とりどりなマカロンが
いっぱい詰め込まれてて



「今日ね、給料日だったから
行きつけのケーキ屋で買ったんだー!!

美味しいよ!!!!」

「そ…そうか」

「うい!!」



俺は途端に頭を抱えた





うあああ!!!!
なんてタイミング悪りぃんだ!!

しかも饅頭とマカロンじゃ
どうやっても勝ち目ないだろおお!!!!





「………」

「盾神ー?」

「……なんだ…」

「それ、饅頭?」

「…ああ…」



するとふと流氷が気付いたのか
机の横に掛けてある大量の饅頭が入った紙袋を指差してた

俺は渋々首を縦に振る





どうせマカロン食うんだろ…
ったく、骨折り損だぜ…

饅頭はベンケイ行きだな




はあっと
大きなため息をついた俺をよそに
流氷は嬉しそうに目を輝かせた



「じゃあさ!じゃあさ!
交換しようよ!」

「は?」



俺はまさかの言葉に
間抜けな声を上げた

流氷は俺の机に
マカロンを置くなり

紙袋にある饅頭を漁り始める



「俺、苺大福がいい!
盾神も選んでいいよ!」

「えっ…おう」



満足そうに饅頭一つを
手に笑うとマカロンを催促し、
俺も適当に一つ選ぶことになった


選んだのは
流氷の苺大福に合わせて
濃い桃色のマカロン



「それはフランソワーズかな
俺、それ一番オススメ!」

「ふうん…」



バリバリと包装を取り
直ぐ様苺大福をかぶり付く流氷



「うんみゃああ!!さすが苺大福…!!」



はむはむと苺大福を頬張り
至福に顔を凝らす流氷を見て
俺は嬉しくて頬が緩む



「ほら盾神も食えよー!!」

「…そうだな」



俺も流氷に言われ
ゆっくりとマカロンを口に運んだ





とろみのある生地と
粘りある甘いクリーム

舌にゴロリと残るけど
嫌な後味じゃない



「どう?美味い?」

「………」



俺は一通りマカロンの味を
噛み締め、喉に通すと


淡く、甘く、酸っぱい…
特別な甘美が俺を支配した






それは、


恋の味だった









おわり






キョウヤ「おい、流氷」

流氷「むご?」(はい?)

キョウヤ「俺こんな食わねぇからお前にやる」ドサッ

流氷「まふっすか!?
ありまほー!!まいしてう!!」
(マジッスか!?
ありがとー!!愛してる!!)

キョウヤ「食いながら喋んな
(…なんか凄い嬉しいこと言われたような…)」







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『無邪気は池面を食べる』
続編です!!

そのままでも読めるかな?

キョウヤは饅頭で
夢主の好感度を上げる作戦が
思わぬ嬉しいフェイントを
受けたようですww

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