小説 | ナノ
かぶり付くのは勘弁してくれ


「珍しいな」

「?、何が?」


ふと頭上から掛かる声に顔を上げれば、案の定櫂がいて

コポッ、と音を上げたスポーツドリンクを片手、彼の言葉に首を傾げれば、とんとんっと櫂は自分の襟足を指差した


「髪、結んでいる。」

「あ…、あー!!
すっかり結んでんの忘れてた!」


櫂のその仕草と言葉に促され
自分の襟足を触ればやっと自分が
ずっと髪を結わえていたのに気付く



「キッチンの仕事は嫌でも汗欠くからなー、」

「そうか…」



気付いてから、俺は結んである髪を指でくるくる遊び、口を尖らせれば、不意にその指に少しひんやりとした体温を感じた


「俺は別にそれでも良いが」

「あ…」


ポツリとそう言ったと同時に
櫂のひんやりとした細い指が
俺の指をそろりとなぞり、絡み付く


「か、櫂っ」

「こっちの方が俺的にはやり易い」


なんだ、と理解するよりも先
指に気を取られ、視界を前に戻せば
そこにはもう櫂の顔が間近にあって


「ま、待っー!」


俺が口を動かすより先に
櫂の唇は俺の言葉を奪い、
そのまま俺の唇へと押し当てる

櫂のその一瞬の動作が
俺には全て、ワンカットを繋げたシーンのように鮮明に見えていた


「お、い」


思いの外、その口付けは直ぐに終わり
その後、ちゅっとしたリップ音が間近に聞こえ、櫂の呼吸を耳にした時、彼は首筋に顔を埋めたんだとやっと理解する

肩を掴み、離れようとしてみても
逆に腰に手を回され
『離さない』とでもいうように
強く抱き締められてしまう


「っあ…、ば、か…」

「どうした?」


首筋に何回もキスを落とし
たまに舌を這っては、その度に空気に冷やされ身震いする

ぞくり、ぞくり、
そうして俺の顔に熱が帯びてゆくのを
櫂はしらばっくれるように耳元で聞いてくる

絶対コイツ、笑ってやがる…



「やっぱりな」

「っ、何がだよ」

「結わえてくれてた方が
首にかぶり付きやすい」

「なっ!?」



今度はじっと俺を見つめて
不適に笑った櫂に『あああ!コイツやっぱり笑ってやがった!』と同時
また一気に熱が俺の顔に集中。


なんでコイツはこう、
自分の容姿の良さに気付かず
ストレートな物言いに、吸い込まれるような瞳で俺だけを求めるんだ

見ているこっちが、聞いてるこっちが
嫌でも胸ときめかせてしまう

て、いうかもう、
俺もコイツしか見れなくなってるのも事実だけどよ…


「だったらもう髪なんか結ばねぇぞ?」

「それは残念だな」


ムカつくのでうりゃっと
櫂の鼻を摘まんでツーンとした応対してやれば、櫂は動じることなく
またニヤリと笑って俺の首筋にガブリ


「なら、今のうちにたくさん跡でも残しておくか」


不意にそう呟いた櫂に
俺は呆気に取られて口がパクパク
それでも変わらず櫂は
俺の首筋に何個目かになる赤い花を付けていく

ビク付く体もそのまま
ぐぐっと櫂の肩を押し、抵抗のまま、声荒げる


「おいマジやめろって!
只でさえ前の跡で友達に馬鹿にされたんだからな!?」

「どんなだ?」

「どんなって…」


ハッキリ聞かれてしまえば
逆に俺がたじろいでしまい

えっとあれだ『お前受けだったのかーー!!!クリリンのことかーーー!!!』『やだ淫らなお人、で相手イケメン?』『お兄ちゃんの裏切り者!だが相手が男なら許す!』『成る程天地がアナルファッ…ああーーーーーー!!!!!こんなの友達に言われてるとか言えるわけないだろー!!!何言っちまったんだ俺はー!!!!


「…と、取り敢えず離れろ…
気分が向いたら髪結ぶし」

「……わかった」

「んう!?」


櫂の返事とは正反対
離れるどころか逆にまた強く腰と頭を固定されて、次には一瞬ではない濃厚な口付け


「は…ぅあ…ん」


口を薄く開き言葉を発するまもなく
その口に櫂の舌が俺の口内に侵入
引っ込める隙も与えず
直ぐに俺の舌は櫂に絡め取られてしまう

食すか如く、息をする度
俺の唇に噛みつき、何度も舌を這わせては吸い上げ
俺はそれになすがまま
ゆっくりとだがその甘味に染め上がってゆく…


「ふ…あ…あ、のな…」

「跡を付けるのが嫌なら
こうするしかないだろ」


互いから垂れる唾液の糸を切り
また一瞬の口付けの後に
櫂の熱を送る視線に目が離せない


「お前はそう言っておきながら
いつもやりたい放題じゃねぇか…」

「そうか?」

「お前な…」


いつも軽く受け流し
わざとらしく首を傾げる櫂に
口を尖らせ、顔を横に向ければ
また首に顔を埋めてきて



「だからもう…」




かぶり付くのは勘弁してくれ!!









……………………

塑「あ、また天地首に跡付いてる!」

来「ホントだ、しかも沢山!」

椎「見せて見せてー!ひー、ふー、みー、よー…」

天「っこら、数えるな見るな笑うな!!」

来「いやぁ、私たちにバレたからってそんなオープンに何処の誰だか知らない天地の男に『俺のもの』宣言されちゃったわー」

塑「もっと…オープンになっても…いいのよ?」

椎「紹介してね!」

天「勝手に話進めんな、それにこれは虫刺され…」

塑「やめとけ天地!!!これ以上墓穴を掘るな!!身を滅ぼすぞ!!!」

天「う、うるせぇ!!
大体コレお前らのせいなんだからな?覚えとけよ………」





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