小説 | ナノ
無自覚は罪である


ごろんごろんと猫が膝の上で、気持ち良さそうに寝転がっている昼下がり

にゃあっと一つ、そいつは鳴き声を漏らし目を閉じれば、そのまま開くことはなく、もう寝息を立てていた


「よしよし」

「……。」


その猫を優しそうに撫でる樟葉に、俺は口をヘの字に曲げてそれを横目で確認して、申し訳ないが眠ったらしい猫に俺は安堵した。


暖かい日差しの中、樟葉の膝上にいる猫は気持ち良く寝息を経てていて、改めて俺と樟葉は二人きり。

ゆっくりとした時間を堪能しながらも側に樟葉がいる、というだけで、少しばかり息が詰まる。

二人きりの空気は、何度遭遇しても慣れない


「猫にとって今日は絶好の日向ぼっこ日和だな」

「…ああ」

「…っふわ…」


うたた寝気味の猫を膝に乗せて、樟葉が小さく欠伸を溢す。その欠伸から出た気の抜けた声に俺の肩の力も抜けて、思わず口が緩む


「人の膝で寝られるとこっちも眠くなるぜ…」

「なんなら、俺の肩でも貸そうか?」

「んー…、でーじょーぶ…」


うとうと、と言うように、雰囲気から眠気溢れる樟葉の顔を覗くと、途端にふにゃり、柔らかい笑みを溢こぼす。

それに俺もつられて笑みで返すと、そこから二人だけの時間がまたゆっくりと流れていく


「……」

「……」


互いに言葉なくただ呼吸だけが繰り返され、ゆったりじっくりと、温かい日の下で時間が過ぎてゆき
…「好きな人と一緒にいる」それだけで俺の気分は満足に浸る

このまま…、この時間が終わらなければいいのに

そう思ってしまう程の祝福の時間だ


「……すう…」

「…?、樟葉?」


ふとコツン、と肩に何かが当たり、読書を中断してそっちを確認してみる。

するとそこには俺の肩に寄り掛かり、小さく寝息を立てている樟葉の姿が


「……」


ゆっくりとその顔を覗き込み、普段見せることない無防備な表情に思わず俺は喉を鳴らす


「(相変わらず、可愛い顔してくれるなコイツは…)」


正直、今の樟葉の姿は可愛らしいことこの上ない。

猫を膝に乗せて、樟葉も目を瞑り夢でも見れたのか口元は緩んでるように見えて、それがまた、俺の心を疼かせるんだ

…まあ、本人に言ったら、口を聞いてくれないだろうから言わないが…


「樟葉…」


じっと樟葉を見つめても、本人は呼吸を繰り返すだけ。

それを再度確認してから…俺は寝息を立てる樟葉の唇を静かに塞ぐ


「んっ…」


ぴくっと微かに樟葉が動き、思わず口づけたまま目を開いてしまうが、どうやら起きてはいないようだ

心中安堵を溢して口を離し、また樟葉を見つめるが
相変わらず無防備な表情のまま


「心を許してるっていうことなんだろうが…」


頬を撫でれば、嬉しいのか、また樟葉は口元を緩めて俺の肩に寄り添う

存在だけで充分な程なのに…樟葉がする一つ一つの動作だけで俺の心は支配される

その分、俺はこいつに頭悩まされるんだ


「少しは警戒というものをしてくれ」


じゃないと俺の理性が幾つあっても足りないぞ…


まだ眠る樟葉の頭を撫で、額に口づけを落としながら俺は大きなため息を付いた。



………………………
天地「(やべぇ…櫂にキスされた時に起きちまった…。今顔赤いのバレてねぇかな…つかあんな後で起きれねぇよ!どうしてくれんだよ櫂!?)」

櫂「(このまま起きなかったら家に連れていってやる。起きなかった樟葉が悪いからな)」

↑天地お持ち帰りフラグ




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