「遅いなー…」



とある喫茶店から小さく空を覗き
未だ降りしきる雨と灰色の雲だらけの空を見て、来夢はため息を漏らした



「もう、
とっくに時間過ぎてるっつの」



来夢が一之瀬と
待ち合わせ時間は午後12時

それまでは雨は降ってなく
サンサンと太陽が顔を出し
もう夏に近い温度に達していた



「雨降るとか天気予報言ってなかったし」



来夢もそれに油断してたのか
温度高くともまだ6月

急に雨が降りだして来たのだ。

勿論、傘も持っている筈もなく
来夢は仕方なく喫茶店のテントに避難。

そうして只今、12時30分
けど一之瀬の姿は未だにない



「…いやぁ、元気だなぁ…若者は」



あまり待ち合わせ場所から
離れることもできず

ポーッと喫茶店から
行き交う人々を見やれば
相合い傘をしている恋人たちが少なからず多く

顔も満更でもない笑みを浮かべてて
また来夢はため息をついた



「(相合い傘なんて、何年もしてないや…)」



少し羨ましいのか
「いつしたっけ」っと思い出そうと
雨空を仰ぎ、記憶を辿ろうとする来夢



「来夢っ!!」

「あっ………」



するとそれを中断するように
一之瀬がやっと前に現れた



「遅い!」

「ごめんね、いきなり雨降ってきたからさ」



紺色の傘を差しながら
もう片方の手にも傘を持ち
申し訳ない、と言うように苦笑いしながら来夢に歩み寄る



「途中で傘買いに行ったんだけど
来夢に渡す傘で悩んじゃって…」


「はい」っと
一之瀬から傘を受け取り見れば、
紫色のチェック柄の背景は白色という飾らない、シンプルな柄



「あ…ありがと。」



その一之瀬の行動と
自分にピッタリ過ぎる傘の柄に
来夢は嬉しさと恥ずかしさが混じり、口ごもりながら小さくお礼を言うと



「じゃあ行こっか!」

「…うん」



差し伸べられた一之瀬の手を取り
彼に買ってもらった
たった一つの傘を差しながら

二人は雨道を楽しそうに歩いていった








RainDay*parasolmagic*
相合い傘なんで私には必要ないわ







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梅雨夢、一之瀬です
結構久しぶりだな…

意図的には
相合い傘よりも彼が私のために傘を買ってくれた。それが嬉しい。
って感じです



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