「おい、塑琉奈」

「………」

「おい」




俺はこいつ
源田幸次郎が嫌い

昔、いじめられた記憶があるから

単にいじめられたと言っても
今考えるとちょっかいだけ
と思えるけど



「久しぶりなんだ
なんか話してくれたっていいんじゃないか?」

「俺はお前がいるなんて思わなかった…」



久々に同窓会があり
俺は誘われて、懐かしき友に
会えると思ったらこれだ



「まだ根に持ってるのか?」

「だったら何?」

「昔のことだ
もう水に流してくれよ」

「だが断る」



見た目からして
随分源田は変わったみたいだが
雰囲気で一発で分かってしまった
自分を一層恨んだ

同窓会メンバーの女子は
更に容姿がかっこよくなっている
源田にキャッキャとテンション上がってるみたいだが


騙されるな皆
こいつは色男の皮を被った黒豹だぞ


俺は昔からの被害者だちくしょー



「大体なんでこっちに来るかな?
向こう行って女の子と話してれば?」

「いいのか?
塑琉奈が妬いてしまうかもしれんぞ」

「あああん!?」



誰がお前なんか妬くかボケカス!!

相変わらず嫌なちょっかい出すなてめーは!!

てか更にそのポジティブに
磨きかかってんな!!



「どこをどうしてそうなんだよ!?
頭だいじょーぶですかー!?」

「少なくとも正常だ」

「俺から見たら異常だ!!」




俺の反応を見て
なにやらクスクス笑いが漏れる源田
俺は気に食わなくて源田を睨み付ける



「…なに?」

「いや…相変わらず可愛いな塑琉奈は…」

「…それ新手の嫌がらせ?」

「本音だけどな」



大抵の女はあの整った顔と
真剣な目で見つめられたら
まあ落ちるでしょうよ

だけど俺からしたら
邪魔の何者でもない



「ねー!!源田くんに塑琉奈ー!!
この後二次会でカラオケ行くけど
二人はどうするー?」

「…カラオケか」

「勿論源田くんは来るよね!?」



俺と源田が言い合いしている中
同級生の女たちが
おもむろに集まり、声掛けてくる

どうやら二次会のお誘いみたいだが
殆どは源田目的だろう

俺はため息をついた



「俺は行かない」

「あっ、そう!じゃあ源田くん…」

「塑琉奈が行かないなら俺も行かない」

「…は?」

「え…っ?」



俺の返答など気にせず
素早く源田に向き直れば

源田の言葉に
俺と周りにいた女達は
思わず間抜けな声を上げてしまった



「いやお前は行ってこいよ」

「嫌だ」

「てめ…っ
てか俺を理由に断るなよ!!
俺は全くの無関係だろが!!」

「だって塑琉奈がいないなんて
行く意味ないだろ」

「人の話聞いてる!?」



ブスッと顔を不貞腐れる源田に
俺は形相を変えて声を荒げる



「あ…っ、ごめん」

「そうゆう関係だったんだ…二人」

「ショック!!」



だが女達はそれを聞いて
俺たちから遠ざかる



「ちょちょちょっ、待て皆!!
それは全然関係ないから!!」

「いいよ、気にしないで」

「お幸せに…」

「違ぇええって!!マジで!!
おまえら話聞けやぁあああ!!!!」



そそくさと後にしてしまう女達に
塑琉奈は涙目になりながら
呼び止めるが
すでに跡形もなく



「………」

「よかったな
これで公然でも承認されたな」

「なんで俺がお前なんかと…」

「俺は嬉しいけど」

「お前は取り敢えずテディベアの如く
隅っこで静かにしててくれ…」



深いため息をついて
頭を抱えてる塑琉奈

それとは裏腹
心底嬉しそうに笑みを溢す源田に
更に頭に血が上る



「…もういい、帰る」

「…?、塑琉奈?」

「…付いてきたら殺す」



俺はこの行き場のない怒りを抑えながら
苛つかせる原因から遠ざかる

一瞬、やつが動いたから
睨みを効かせて念を押せば
付いてくることはないだろう



俺は重くなった肩の荷を背負いながら

同窓会を後にした












「はぁ…」



本当に最悪

せっかくの同窓会で
なんであんなやつと
会わなきゃいけないんだ

勘違いまでされて…
俺の面目は丸つぶれだよ



「家で飲み直そう…」



グシャッと髪をひと掻きして
頭の中を一掃させると

また一歩踏み出す


するとその瞬間
肩を捕まれ、足は止まる



「…いい加減にしろ!」



俺は額に青筋走り
源田だと思い込んで
勢い強く拳を奮い上げてみれば



「いってぇええ!!!!」

「えっ!?うそ!?」



そこには全く知らない男たちがいて

俺は一気に慌てた



「ごごご、ごめんなさい!!
てっきり別の人だと思って…」

「んな強く殴っといて
ごめんなさいじゃねーだろ!!」

「ねぇちゃん、いい度胸してんな?」



慌てて謝っても
男たちの怒りを煽るだけ

次には強く手首を捕まれる



「責任、取ってくれるよな?」

「いや…あのー…」

「あー、殴られたらムラムラしてきた…」

「お前はそっちかよ」



掴まれたと思えば
次には三人の男に囲まれて
逃げ場がなくなってしまう




うわぁあああ!!!!
なんでこんなことになるんだぁああ!!

これも全部あいつせいだぁああ!!
どうしよう……





「あの…お金なら全部あげますから
離してください…」

「いやお金だけじゃ
どうもなんないでしょ!」

「できれば体で払ってほしいなー」



ぎゅっと掴んでいる男の力が強くなる

痛みに顔をしかめながら
懇願しても、話し合いの余地はなく




確かに俺が悪いけどさ…

本当に勘弁してください

誰か…助けて





ううっ…と唸り
ポロリと涙が一つ頬に流れた時だった

先ほどまで掴まれていた腕の力が
フッと無くなり、自由になる



「俺の女に手を出すな」



そして嫌でも聞き慣れた声が
自分の側で聞こえて

顔を上げてみれば

そこには源田の姿



「なんだてめえ」

「二度は言わない」

「…っい、いてぇ…!!」



今まで見たことのない
怒りに満ちた源田の姿は

本当に黒豹みたいで

掴んだ男の腕にギリギリと力を入れ
指が食い込むほど

逆に俺を支える左手はとても優しくて

思わず見とれてしまった




「ちっ…仕方ねぇ」

「おい行くぞ」

「ぐぅ…」



その源田の形相に三人は後退りし

舌打ちを残し
とぼとぼとその場を後にした



「…大丈夫か?」

「う…うん」

「そうか…」



男たちが去った後

コロッと表情を変え
心配そうに俺の顔を覗く源田

それにちょっとばかし恥ずかしくなって
目を反らして返事してれば
次には温かい温もりの中にいて



「げげっ…源田!?」

「よかった…
塑琉奈に何かあったら俺…」



ぎゅうっと源田に
強く抱き締められて

俺は慌てて声を上げるしかなく



「ごっ、ごめん!
なな、なんか心配させちゃって…」

「…塑琉奈」



わあわあとなんとか言葉並べ
源田の背に手を添えると

思った以上に広い背中で

なぜかとくんと心臓が跳ねる



「…ん!?」



そして源田は俺を見つめるなり
その整った顔で俺の唇を奪った



「え…え…と」

「俺は塑琉奈のこと
小さい頃から好きだ…」



源田の一瞬のキスで
俺の顔に熱が集中する

訳が判らないのが
源田の言葉にまた、心臓が跳ねること





なにこれ…熱い…





「塑琉奈は
俺のこと嫌い…なんだよな…?」



熱が帯びる体を抱き締められ
少し寂しそうに首を傾げた源田に

俺は顔が見れなくなって
彼の肩に顔を埋めた



「…わかんない」

「え?」

「…わっ、判んなくなっちゃったよ!!」



お前のせいだ!!

そうグリグリと顔を押し付けて
源田を胸を叩けば

彼から笑みが溢れる



「そうか、嫌いから判んないか…」

「わっ、笑うな!!」

「すまん、すまん」



クスクス綺麗に笑う彼に手を引かれ

俺は気に食わないながらも
足を動かす



「…もう一歩だな」

「な…なに…?」

「ううん、なんでも」

「てか手…離せよ」

「嫌だ」





二人が恋人になるのは

まだまだ先になりそうです









END?







--------->
うひょひょーいww
ガチガチな文章でごめんなさいww

多分続編作る…かな?



back
×