「来夢!来夢!」



今日はなんだかいつも以上に
一之瀬がうるさい

何かひと動きがある度
私を呼びやがる



「…なに?」

「来夢の瞳に乾杯」

「瞳じゃあ乾杯できねぇな」

「そうやって…
鋭いツッコミをする来夢も 好 き ☆」

「あぁあ!!
お前すこぶる半端なくうぜぇえ!!
微妙付けられないくらい!!」



しかも限って
クサイフレーズばっか言って来やがる

確かこれで五回目

当の本人は満足そうだが
私はストレス溜まりまくりだ



「…ったく」

「あっ!!来夢さーん!!」



ニマニマ練習に行く
一之瀬の背に舌打ちすれば

ふと綱海くんが
勢いよく私に駆け寄ってくる

それが少しソワソワしてる様子で



「どうしたの?」

「あの…塑琉奈さん見ませんでした…?」

「塑琉奈?確かえー…と…」



落ち着きがない綱海に
私は首を傾げながら記憶を辿ると





『来夢ー!!今日バレンタインだからこれ!!』

『おぉお!!ありがとう!!』

『えへー、手作りなんだよー』

『マジか!?珍しいなお前がw』






ふと塑琉奈との会話を思いだし
ああっ!!と自分で納得してしまった



「なっるほどねー!!」

「えっ?なにがっすか?」

「あっ、ううん!!なんでもない!!」



きょとんと見つめている綱海に
慌てて首を振ると、笑みを浮かべた



「何処かでチョコせびってるんじゃない?」

「ええ!?マジか!!
すいません!!ありがとうございました!!」



ニヤっと笑い言ってやれば
綱海は慌てて、来夢の横を通り過ぎ、駆けていった



「…さーて、どうしたもんかなー」



綱海を見送った後
来夢は少し唸り、顎に手を当て、考え込み始めた










「来夢!来夢!」



練習休憩中
また一之瀬が私にやってくる

さっきまでは
ウザイだけだったのか

一之瀬の意図が判ると
何故かいとおしく思えて



「はい」

「え?」



私は仏頂面ながら
一之瀬の掌にあるものを置いてやった

するといつも余裕満々で笑う一之瀬の顔が
一瞬で驚きで私を見つめるのに

面白くて頬が緩む



「なにその顔?これじゃ不満?」

「えっ、いや!!
そんなことないよ!!」



必死に笑うのを堪えて
ぶつくさ言ってやれば

綺麗な顔つきが満面の笑顔になる



「嬉しいよ…!!
来夢から貰えるなんて!!」

「おっ…大袈裟だなお前…
チロルチョコなんかでいいの?」



その一之瀬の笑顔が眩しくて
私は慌てながらも目を離せられない



「来夢から貰ったチョコだもん!!
僕にとってはかけがえないものだよ…
ありがとう、来夢!!」

「う…うん…」



目が離せられなくて
そこまで言われるとは思ってなく

なんだか照れ臭くて
頷くことしかできない私



「どうしたの?」

「なっ、なんでもない!!
こっち見んな変態!!」

「…ありがとうね?」

「二度も言わなくていいから!!」



顔を覗いてくる一之瀬を見られず

私は顔が赤くなるのが治まるのに
一時間も掛かってしまった









君から貰えることに意味があるの







一之瀬「来夢がくれた記念に
これ飾っておくね!」

来夢「いや食べろよ」

一之瀬「だってー…」

来夢「…気が向いたら作ってあげるから」

一之瀬「本当に!?」

来夢「気が向いたら…ね」








---------->
一之瀬のバレンタインでっさー!

夢主はコンビニに
取り敢えずチロルチョコを
買ってきたんですよ

そしたらあんな喜ばれるとは
思わなくて
照れてしまったみたいな



back
×