今日は俺が嫌いな行事の一つ
バレンタイン

無駄に頬を染めて
媚びを男に売る女の行事

なにが気持ちをチョコにだ
んなもんチョコはチョコだろうが



「不動くん!」

「……」



また知らない女が俺の前に
立ちはだかる

……気安く名前呼ぶんじゃねぇよ



「あの…、これ!」



目的は一つ
そうチョコレート渡しにきたんだろう

だが俺からしたら
知らない奴から貰うなんて気味が悪い



「……」



俺は返事もせず
そいつの横を通り過ぎ
また歩みを進める

後ろから聞こえた小さい泣き声も
気にしない

はあっとため息をついて
ふと空を見上げれば
今度は後ろから声掛けられた



「こら、女の子泣かしちゃダメだろ?」

「…なんだ、塑琉奈か」



またかよっと思った一瞬
聞き慣れた声に何故か安堵する俺

塑琉奈はというと
変わらず笑みを浮かべて
俺と歩幅を合わせる



「不動くんはいらないのか?
バレンタインチョコレート」

「…誰がいるかよ」



あんなもんっと
口を尖らせ、前を見据えてれば
少し残念そうな塑琉奈の声



「そっかー…、ならいいけど」

「…文句あんのか」

「いや?俺には関係ないこった」



それを聞くなり
よいしょっとバックを抱え直し
塑琉奈は踵を返す



「おい、何処行くんだ?」

「バイトだよん」



ヒラヒラと背中越しに手を振り
塑琉奈がそのまま俺から
遠ざかるのを見つめながら



「…意味わかんねぇ」



俺は塑琉奈が話し掛けてきた理由も判らず
練習場所へ向かった











ロッカールームに着けば
何やらメンバー達がうるせぇ

原因を探るより先に見つけたのは

一人一人に
チョコレートの箱を持っていて



「おっ、不動!!おはよう!!」

「………」



円堂が口元をチョコまみれにして
俺に歩み寄る



口拭けよ……



俺は返事はせず
周りを見渡して舌打ちをした



「不動は貰ったか?チョコ?」

「あ?んなもんいらねぇよ」



円堂の言葉に
思わず眉間にシワを寄せて睨み付ける

だが円堂はキョトンと
驚いた顔つきを俺に見せた



「おっかしいなー
みんな、塑琉奈さんから貰ったんだけど…」

「…は?」



不動にだけあげないなんて
変だよなーっと首を傾げる円堂



「それ、本当か?」

「ああ、そうだけど…って、不動!?」



俺は円堂の言葉を聞いて
自分に嫌気が差しながらも
ロッカールームを後にした









「…ったくよ!」



俺は走りながら
携帯を取りだし、素早くあいつに電話を掛ける



間に合うか!?



『うぃいす』



すると電話越しから
走っている自分とは裏腹に
間抜けな声が聞こえ

俺は思わず声を上げる



「てめぇ!!今何処にいやがる!?」

『なんでそんな怒ってるのー?』

「うるせぇ!!さっさと言え!!」

『何処って…
そりゃあバイト先に向かって…』



のんびり返事をする塑琉奈に苛つきながら

公園前に差し掛かると
ふとベンチに座っている見慣れたあいつの姿



「…お前さ」

『ん?なに?』

「バイト行くってほざいてたよな」

『うん、そうだよだから……あ…』



俺は息を整え、電話を切らずに
塑琉奈に歩み寄れば

気付かなかった塑琉奈は
俺の姿を確認した瞬間、
更に間抜けな声と間抜けな顔の両方を見せた



「嘘付きやがったな」

「ごっ、ごめんて!
てかまさか来るとは…」



俺の気に食わない顔に
塑琉奈は慌てて謝罪を述べるのに
俺は構わず隣に座る


すると塑琉奈の膝の上に乗っている
小さい箱が視界に入った



「…それ、俺のだろ」

「あーまあ、そうだけど…」

「よこせ」

「え!?」



俺の言葉に心底驚いたのか
塑琉奈は目を丸くして俺を見つめる



「だって不動くん、いらないってさっき…」

「いいからさっさとよこせ」

「ちょっ、おま…」



驚くばかりで渡さない塑琉奈に
痺れを切らし、奪い取って見れば

メンバー達とは何故か違う
ラッピングがしてあって



「なんだよこれ?」

「うわわわわ!?それは見るな!!」



リボンに英文で『不動へ』と
書いてある小さなカードが挟んであり

それを手に取れば

いつもの余裕はなく
塑琉奈は必死にそれを奪おうとしてきた



「うるせぇな、
てめぇが自分でやったことだろが」

「そうだけど!!目の前で読むなよぉお!!」

「………」



ひらりと塑琉奈とかわしながら
カードを開いて中を覗いた瞬間
俺はピタッと動きを止めた



そこにはたった一行
『I lave you !』と書いてあって





「お前…、スペル間違ってるぞ」

「えっ、嘘…っ!?」



注意を促し
塑琉奈が顔真っ赤にして
カードを覗こうとしたのに

俺はその一瞬で
塑琉奈の唇を奪ってやる



「っえ…不動く…」

「…こんなん渡されちまったら…」



俺がホワイトデーまで待てねぇよ



丸くした瞳に俺を映す
塑琉奈の耳元でそう囁いて

柄にもなく嬉しい俺の





『I love you』





跡を首筋に残してやった









Sweet Lie(甘い嘘)
こんなバレンタインは初めてだ





不動「"love"もわかんねぇなんて
お前、本当に馬鹿だよな」

塑琉奈「うっせぇええ!!
じゃあそれ取り消しな!?
なかったことにして!!」

不動「嫌だね」









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なんか内容がww

不動は夢主のチョコは
欲しかったんだよきっと!

そして夢主のアタックの仕方に
射抜かれた感じで!



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