たとえばおまえがおれを愛するとして




例えばお前が俺を愛してくれているとして、そして一体何が有るのだろうか。
それはお互いに利益や得が有ればいいが利益や得はあるだろうか。
物凄く馬鹿みたいな発想だと思いたければ思っておけ勝手に。
ただ俺には分からない。エスカバに告白されその取引らしきものを承諾してしまったものの、恋愛や愛情、愛しあうなんてことは全く俺には解らない。
寧ろ俺は愛されているのかが謎だった。
本当は俺は遊びか何かじゃないかと考えると辛くなった。
ああ、どうすればいいのだろう。考えれば考えるほど頭が痛くなる。
今はミッション中だと言うのに。少し頭を冷やせ、俺。






「バダップどうした、集中出来ていないが。」
「…すまない。」
「急いで終わらせて早く休もうぜ。お互い疲れてるし。」
「…ありがとよ。」






隣でぴしゃりとミストレに言われた。
そう、今この場所にエスカバは居ない。
今日エスカバは俺達とは違う場所でミッションを行っていた。
だから考える必要なんて何処にも無いのに、思ってしまう。
告白されたあの日、「好きだ大好きだ愛してる」と言われた。
俺には解らない単語が勢揃いだったが顔から火が吹き出るほど恥しい感情はあった。
それをミストレにこっそり相談した所、
「バダップおめでとう今日からお前も普通の人間の仲間入りだよ。」
と言われた。理解不能だったが褒め言葉だったようなので受け入れた。
兎に角俺は其処でエスカバのに恋愛感情を抱いていることに気付かされた。
それからというもの、目が合う事すら恥しいのだから。

そしてその日のミッションが終わった夜、エスカバが俺の部屋にやって来た。
エスカバは風呂上がりだったらしく普段は横に流れる奇抜な髪形は降りていて多量の汗を流している。
格好良い、そう思った。そう思った矢先恥しくなったが。


「どうした」
「どうしたもこうしたも…お前に話が有る。」
「何だ」


はぁ、と大きく深呼吸してエスカバは間を置き言おうとした。
が、その瞬間に一気に暗転、可笑しな事に俺は机のイスからベットに押し倒されていた。
押し倒されたことが分かるとかなり恥辱を受けた気がした。
顔を上げると目と鼻の先にはエスカバがこちらをうんと睨みつけている。
睨み返そうと思っても睨めない。ああ、これがいわゆる恋の病?と呼ばれるものか。
エスカバの顔が耳の辺りまで来た時、何か武器が飛んでくると思い身構える。
が、何も来なかった。来たのは彼の囁きだけだった。


「…らしいな。」
「……は?」
「ミストレから聞いた。今日俺と違うチームでイマイチミッションに身が入らなかったって。まぁそんな事は求めねぇけど。」
「用件は何だ」
「だーからぁ、俺はさ、正直不安だったんだよ。どうせお前の事だから利益とか不利益とか訳わかんない事ばっか考えてるんじゃねーかと思ってさ。…だけどまぁ安心したわ。」
「今そのセリフで安心する場面は何処にあるんだ。簡単に纏めろ。」
「馬鹿野郎。こういうものは纏めるものじゃねぇんだよ。」
「…そうか。ならば免除してやろう。」
「……行ける所まで、行っていいか?」
「…よくわからないが構わん。お前なら。」


例えばお前が俺を愛しているとしたら、
利益不利益損得、
そんな物は考えなくていいのだろうか。
考えることと言えば、
人を愛する事なのだろうか。



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