※一万打企画「Let me have you all to myself」の続きです



名字の腕を引いて連れ込んだ部室に入るなり、後ろ手で鍵を閉めた。細い彼女の腰を抱き寄せて、唇を重ねる。最初は戸惑っていた名字も、宥めるようにそっと唇を重ねているうちに、彼女の腕が俺の首へと回されて、応えようとしてくれる。少しだけ背伸びするその仕草がまた可愛くて、ついもっとと欲しくなる。ゆっくり事を進める筈が、強引に奪ってしまいたくなるから、彼女の可愛さは質が悪いと思う。…俺がそんな風に思っていることなど、きっと彼女は知らないだろうけれど。

ぺろり、と彼女の唇を舐めれば、びくりと名字の肩が揺れた。そうして、勢いよく俺の肩を突き飛ばして、あわあわと後ずさる。足がもつれて畳の上へと座り込んだ彼女の正面にしゃがみこむ。名字は顔を真っ赤にさせて、口をぱくぱくと動かしている。何かを訴えたいようだけれど、言葉にならないらしい。

彼女と触れるだけのキス以上を今までしたことはなかったから、もしかしたら逃げられるかも、とは思っていいたけれど、やっぱり逃げられてしまった。

「す、スガさ、今、なっ、舐めッ、」
「うん。舐めたね。」

つーかそんなあからさまに逃げられると傷付くんだけど。
困ったように苦笑いを浮べれば、名字はしゅんと肩を落とす。スミマセン、と呟いた彼女に微笑みかける。

「嫌?俺とそういうことするの。」

ふるふると首を振った彼女の両頬にそっと触れる。

「名字が嫌なら、無理強いはしないけど。」

出来るだけ優しい声、表情を心掛けて名字に話しかける。恥ずかしいのか、俺を目を合わせようとせずに視線をうろうろと泳がせながら名字がごにょごにょと呟く。

「い、や、じゃない、ですけど。その、恥ずかしいというか、心の準備が、出来ていない、といいますか、」
「じゃあ待つよ。」

十秒だけね、と付け加えて笑いかければ、名字が短い!、と抗議の声をあげる。そんな彼女を無視して、じゅーう、きゅーう、とゆっくり数える。始まったカウントダウンにおろおろする彼女がまた可愛い。

「よんさんにいちぜろ!」
「ちょっ、早っ、早い!」

慌てる彼女を引き寄せて、その頬に口づける。額を合わせて顔を覗きこめば、真っ赤な頬で潤んだ目の名字と目が合う。

「どうする?」

聞いた所で、今更引き返すつもりなんてないクセに狡いことを聞くものだ、と我ながら自嘲する。それでも多分彼女は俺を拒まないことを知っているし、愛しい彼女に触れたくて、独り占めしたくて、俺の中の獣は既に目を覚ましている。

「嫌だったら殴ってでも逃げて。」

黙ったまま答えない彼女に、最後の逃げ道を与えてその唇に触れる。逃げて、って言っておきながら、彼女が逃げられないようにその後頭部を押さえて、手首を掴む。何度も角度を変えて口づけながら、下唇をぺろりと舐める。今度は逃さない。びく、と名字の肩が揺れて、僅かに開いた唇の隙間から舌を捩じ込んで絡める。おずおずと彼女が応え始めてくれた頃を見計らって、ずっと気になっていた白い太腿に触れる。滑らかなその感触を堪能した後で、服の上から胸に触れる。

ねえ、名字。初めてが、こんな場所で、こんなタイミングで、なんて後で怒るのかもしれないけどさ。
俺は今どんな顔で、どんな声で俺を強請ってくれるのか、楽しみで仕方ないんだよ。文句なら後でいくらだって聞くから、どうか今だけは、俺だけを見て、俺だけを強請ってくれないかな。





naughtiness
(君が可愛すぎるのがいけないんだよ、)