そっと彼女に手を伸ばす。
ぎゅっ、と強く目を閉じて、怯えるように身を固くした彼女の髪に触れ、くるくると指に絡めたりして手の中でさらさらの髪を弄る。その間も固まったままの彼女に、内心でため息を吐いて、手を離す。そうして、おずおずと目を開けた彼女の顔を覗きこむ。

「そんなに嫌?」
「え?」

俺に触られるの。
呟くと、驚いた様に目を丸くした彼女が、ふるふると俯いて首を振った。

「ち、違うの、」

そうじゃなくて、と小さな声で呟いた彼女の耳が赤くて、きっと俯いているその顔も同じように真っ赤なんだろうな、と思うと何だか微笑ましくなる。

「その、恥ずかしくて、」

ぽつりぽつりと話す彼女の言葉を、一つとして聞き逃すまいと小さなその声に耳を傾ける。いつだって彼女の声も、言葉も、聞き逃したくなんてないけれど、今は尚更聞き逃したくない。

「スキン、シップに、あまり慣れていない、というか、」

どう言えばいいのか思案しているのか、ごにょごにょと口の中で言葉を濁す彼女の姿に、思わず笑みが溢れる。俯いていて、俺が手を伸ばしたことに気付いていないことをいいことに、そのまま彼女の頭に触れる。
弾かれたように顔を上げた彼女顔を覗きこんで、その頭をぽんぽんと叩く。

「ごめん、変なこと聞いて。」
「う、ううん、私の方こそ、その、」
「ゆっくり慣れていけばいいよ。」

少しずつ、その緊張が解れていけばいい。少しずつ、俺に慣れて、いつかその緊張が安心に変わればいい。その日が訪れるまで、その時が訪れても、ずっと俺は隣にいるから。




僕らのペースで
(だから焦らないで)