連休の合宿以来、スガさんがやけに甘い気がする。具体的に何がどうとはうまく言えないけれど、何となくそんな気がするのだ。とにかくスガさんの雰囲気が甘い。その甘さと距離の近さにどきまぎしているのは、私一人なんだろうか。

大地さんが肉まんを奢ってくれるというので、皆で坂ノ下への道をぞろぞろ歩く。大地さんや旭さんと並んで歩くスガさんの後ろ姿を見ながら、隣を歩くノヤっさんに話してみた。

「最近さ、何かスガさんがやけに甘い気がするんだよね。」
「何言ってんだ、スガさんが名前に甘いのなんて最初からだろ。」
「いや、そうじゃなくてさ、」
「むしろもっと厳しくてもいいくらいだ!」
「…。」

まともに取りあってくれないノヤっさんとの会話で、聞く相手を間違えたと反省する。ノヤっさんじゃなくて縁下とかに聞けば良かった。そうすれば、もう少しくらいまともな意見を聞けたかもしれないのに。何でノヤっさんに相談したんだろう、数分前の自分が恨めしい。
つらつらと内心で後悔しているうちに坂ノ下に到着していて、大地さんに肉まんではなく、私はあんまんをご馳走してもらった。何となく、今は甘いものが食べたかったのだ。
はふはふと火傷しないように気をつけながら、熱々のあんまんにかぶりつく。口の中に広がる甘さと温かさに頬が緩む。

「名字のあんまんだっけ?」

いつの間にか隣に立っていたスガさんに聞かれて、口の中のあんまんを咀嚼しながら頷く。

「一口ちょうだい。」

そう言われて、どうぞ、とあんまんを手渡そうとしたその手首をスガさんに掴まれた。スガさんの顔が近付いて、私の手の中のあんまんにかぶりつく。予想外の行動と距離の近さに心臓がばくばくと脈を打つ。スガさんに掴まれた手首が急に熱を持ったみたいに熱くなる。顔もきっと赤くなっているに違いない。

「す、すすスガさん!?」
「こっちもうまいなー。」

一口食べてスガさんはすぐに離れた。目敏く赤くなった私の顔に気が付いたスガさんに顔を覗き込まれて、私の顔は更に熱を帯びる。

「名字顔真っ赤だけど、どうした?」

どうしたも何も、スガさんのせいです、とは言えず口篭る。

「スガさんが、」
「俺が何?」

聞き返すスガさんは満面の笑みで、わざとやっていると気付く。私が赤くなって動揺すると分かっていて、反応を楽しんでいるのだ。

「ズルイです。」
「何が?」

あぁ、もう、にこにこ楽し気な笑顔が憎らしい。不意打ちで近付いたり触れたり、その度にからかうスガさんは楽しそうで、だけど、何一つ嫌なんかじゃないから何も言えなくなる。
お願いだから、この甘い空気を何とかして欲しい。




甘すぎ注意報
(耐えられそうもない)