キーンコーンカーンコーン
「今日はここまでだ。起立、礼」
「「「ありがとうございました」」」
ありきたりな授業のやり取りが終わり、センコーが教室から出て行った。
もう四時限目の終わりだから周りの奴らが色々と騒いでいる。
ウルサいってのが実際の感想だが、あの女子特有の甲高い声が聞こえないからその分だけはましでいい。
まぁここが男子校ってのが理由なんだけどな。
ぶっちゃけて言うならむさ苦しいけど、それなりに楽しいこともある。
例えば、
「龍ー!飯くおーぜ!」
「んっ」
「早くでござる龍殿ー!」
「Shit!少しvolumeを下げやがれ!」
「まーまー。政宗も落ち着いてよ。旦那も悪気があったわけじゃないし」
「おっ!元就、今日は煮物か」
「黙れ阿呆。貴様にはやらん」
こいつらとかそーゆーののいい例。
こいつらはアレだ。俺とほぼ同類の奴らだ。
後ろで未だに「はやくー!」とか言ってるから急いで鞄に手を突っ込んだ。
ん?いつもならアイツが入れたはずの弁当が有るはずなんだけど、今日は弁当箱の感触が全くない。入れ忘れたか?
まぁ、誰にでも失敗はあるからな…買い行くか。
「わりぃ。弁当忘れたから買ってくるぜ」
「Ahー?龍忘れたのか?」
「あぁ。しかたねーから買ってくるぜ」
「でもさぁもうないんじゃない?購買は」
「だよな。俺の弁当やるか?」
「あー。なかったら飲みもんだけにするからいいぜ元親」
そう言いながら財布を持ち、ドアへと向かう。きっと行ってももう無いと思うけどな。
確認しなかった俺もわりぃし。今日は諦めるか。
後ろでアイツらが「某の弁当もあげるでござるよ!」「我もくれてやらんこともないぞ」なんて言っていて、やっぱりいい仲間をもったな。
「ありがとな」と言い、ドアを開ける。
するとそこにはどう見ても政宗、もしくは元親の部下らしき奴がいた。
しかもその手には、似つかわしくない弁当を持って。
「? それって…」
「あっ!龍のアニキ!ちょうどいいとこに」
「コレ龍のアニキにっス!」
「どうしたんだよこの弁当」
「いや、今朝そこの正門で龍のアニキに渡してくれって!それにしても龍のアニキもすみにおけないっスね!」
「うっせ!ありがとな」
「っス!じゃあ失礼しました!!」
多分アイツは男子が苦手ながらも来てくれたんだよな。隣の学校だけど、それでも来てくれたのか。
そう思うだけで顔が自然とにやけてくる。
ヤバい。ものすごくアイツが可愛い。
あぁ。俺は重症なんだななんて思いながら政宗たちの居る席に着く。
不思議そうに見上げてくる政宗たちには悪いが多分俺は本当に重症なんだ。
「弁当きたのか?」
「あぁ。届けてくれたんだとよ」
「よかったでござるな!でもなんで気分がそんなに良いのでござるか?」
「ちょっと、な」
今日帰ったら何を言おうかなんて考える俺はやっぱり重症だ。
ただ、コレが俺と政宗たちとアイツ…陽榎との恋の始まりなんて俺は思いもしなかったんだ。
好きが溢れていて
(おー!龍の弁当うまそー)
(ホントだねー俺様も食べてみたいね)
(あん?やるわけねーだろ)
(早い者勝ちでござる!)
(あっ!幸村てめぇー!!)
(!! ものすごく美味でござるぅ――!!!)
(ちっ!)
加筆修正 20091027